バンブーズブログ

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[社説]AI企業は著作物利用の適正対価を払え


 
 
#社説 #オピニオン #ChatGPT
2023/9/28 2:00
 
米議会で証言するオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)(5月、米ワシントン)=ロイター
「Chat(チャット)GPT」などの生成AI(人工知能)に手本となる文章や画像を覚え込ませる「学習」工程で、無断で著作物が使われる慣行が問題になってきた。著作物の商業利用には適正な対価を支払うという大原則を、AIを含むあらゆる事業者は改めて尊重してほしい。

8月、ノンフィクションライターの最相葉月さんが日経電子版の「Think!」コーナーで報告した。ChatGPTが最相さんの作品を盗用して文章を作ったことを白状し、謝罪したという。開発元の米オープンAI社が無断で学習に使ったとみられる。

米国ではイラスト画家や小説家がAI学習への作品の無断使用は著作権侵害だとして、オープンAIなどの開発元を続々と提訴している。ニューヨーク・タイムズをはじめとする大手メディアもオープンAIにコンテンツ利用料の支払いを求めている。応じなければ訴訟も辞さない構えだ。

AIによる著作物利用のルールはどの国でも未整備だ。米国ではこれらの裁判が進行し最高裁判決が出てようやく判例法としてルールが確立するとみられる。

日本では2018年の著作権法改正で「著作権者の利益を不当に害する」場合を除いて、AI学習への著作物データの利用に許諾は不要と明記した。だが、当時は今のような高性能なAIの実現を想定しておらず、例外規定の「不当な利益侵害」の定義も曖昧だ。再修正が必要だろう。

政府は「AI時代の知的財産権」について有識者会議を立ち上げ検討するという。国際協調も視野に検討を急ぐべきだ。

生成AIやネットから誰でも好きな作品や情報をタダで入手できれば、著作業やメディア産業は成り立たない。それでは民主主義の支柱である市民の知る権利が守れず、芸術・文化も育たない。そんな常識に基づいてIT(情報技術)事業者は、法整備を待たず著作権保護を徹底してほしい。

問題はAIに限らない。カナダが記事のネット表示に対価支払いを法律で義務付けると、メタやグーグルは同国で記事表示を止める暴挙に出た。日本の公正取引委員会は、ヤフーなどのネット企業が報道記事の利用料を不当に低く設定している可能性を指摘した。

社会の情報基盤を担うIT企業は民主主義や文化を守る責任を認識し、行動すべきだ。