バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]インボイスの定着へ政府は万全を期せ


 
 
#インボイス #社説
2023/10/1 2:00
 
岸田首相はインボイス導入に関する関係閣僚会議で「デジタル化」の推進も呼び掛けた(9月29日午前、首相官邸
消費税の税額や税率を正確に記すインボイス(適格請求書)制度がはじまる。10%と8%の複数税率をとる日本で、適切な納税のために必要な制度だ。

導入を巡っては中小・零細企業を中心に不安の声も根強い。政府は丁寧な説明と支援で制度の定着に万全を期してほしい。これを機に、企業間の取引や会計事務のデジタル化も大きく進めたい。

消費者が支払った消費税は、小売店、卸売業者などが分担して納める。インボイスは登録事業者ごとの番号を付け、標準税率10%、食料品などの軽減税率8%の税額を明記した請求書だ。複数税率をとる欧州でも定着している。

政府は9月29日、インボイス制度の10月1日の導入に向けた関係閣僚会議を開いた。岸田文雄首相は事業者の抱える不安の解消に政府一丸で取り組むよう指示した。

インボイスは19年の軽減税率の導入時に決まっていた方針だ。消費者の払った消費税が事業者の手元に残る「益税」の是正は課税の公平に欠かせない。

影響が出るのはこれまで消費税の納税が免除され、事業者と取引のある中小企業や個人事業主だ。

インボイスの発行事業者になれば税負担が生じる。インボイスを出さない免税事業者を続ければ、仕入れ時の税額を差し引けず税負担が増えるのを嫌う相手の事業者から、取引停止や価格引き下げを迫られる懸念がある。

新たな環境に不満や混乱が生じるのは避けられない。政府は不安に寄り添い、きめ細かい相談や説明と支援策を用意すべきだ。

政府は課税に転換した事業者が一定期間は本来より低い納税額ですむようにする制度や、免税事業者からの仕入れをした課税事業者に消費税の軽減を認める措置を設けた。支援策の周知に努め、新たな取引関係を築けるような環境を整えてほしい。

公正取引委員会も一方的な取引条件の変更など独禁法違反につながりかねない措置に目を光らせ、不当な扱いを防ぐべきだ。

首相はインボイス導入を「取引環境の改善や取引のデジタル化につなげる」とも述べた。妥当な考え方だ。政府はインボイスの電子化などを可能にするITソフトや一部の機器の導入を補助金で支援している。金融機関の便利な決済サービスの利用もできる。新制度を生産性を高める好機ととらえる発想が大切だ。