バンブーズブログ

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[社説]多様な料金でイベント持続を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/1 2:00
 
わらじまつりでは初めて有料席を設け、沿道より高い場所で観覧できるようにした(8月4日、福島市
エンターテインメントや地域イベントなど娯楽サービス価格の多様化が進んでいる。自治体主体の祭りでも有料席は増え、民間事業では高額の特典付き観戦が目立つ。料金の多様化は事業の安定化へ有効な手立てになるだろう。

日本では一律性を重んじる社会性もあり同じサービスでの価格差はあまり好まれなかった。自治体のイベントも無料が中心だった。

しかし近年はこの流れが変わってきた。背景にあるのは人手不足に伴う会場の設営や運営コストの上昇だ。このためイベントの開催すら難しくなるケースがあり、価格幅を持たせ、収益力を高める対策が欠かせなくなっている。

2023年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動規制がなくなり、各地で大型イベントが再開。自治体主導でもかなり高額な有料席が話題になった。

青森ねぶた祭りでは100万円のVIP席や、20万円の高額な席を増設したが、ほぼ完売だった。京都の祇園祭でも40万円のプレミアム観覧席が登場した。

狙いは伝統イベントの持続性を高めるためだ。もちろん地元住民からの理解を得るための活動は前提となる。

民間の娯楽サービスでもプレミアム観戦は広がっている。例えばチケット販売・イベント企画のぴあはラグビーのリーグワンで最高額11万円の特典サービス付き席を用意したり、花火大会で2万5000〜10万円のコースを作ったりして、価格幅を広げている。

ぴあの矢内広社長は「エンタメは社会に欠かせない。高齢者や子供向けなどを優先した観戦を実現するためにもこうしたプレミアムサービスを増やしたい」と話す。

人手不足に加え、顧客ニーズの多様化も背景にある。とりわけインバウンド(訪日外国人)は高額でも付加価値サービスを求める傾向があり、需要は旺盛だ。VIP向け観戦サービスは欧米が先行し、世界市場は将来的に3兆円に達するとの試算もある。日本経済の底上げにも重要になりそうだ。