バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]外国人価格の設定は根拠を説明可能に


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/28 2:00
 
外国人観光客らでにぎわう清水寺周辺(京都市東山区
インバウンド(訪日外国人)旅行者向けのモノやサービスの価格を、日本人より高めに設定することを考えてはどうか。観光業界などでこうした「外国人価格」への関心が高まっている。単価引き上げが目的だが、単純な二重価格は不信や不快を招く。合理的で説明可能な値上げの道を探りたい。

外国人旅行者数の増加に円安効果、賃金や物価水準の内外差が重なり、訪日観光客の旺盛な買い物意欲が目立つ。負担能力の高い外国人の価格は上げ、固定客の日本人や地元住民には従来通りの価格で提供したいという発想が生まれるのは自然ともいえる。

JRの割安パスに代表されるように、日本の観光・運輸業はこれまで物価高の国の「おもてなし」として、「外国人には値引き」を基本としてきた。環境が変わった今、発想を転換したい。

海外ではこの種の二重価格は珍しくない。しかし、例えば飲食店で「自国語と外国語のメニューで価格を変える」といった乱暴な方法は口コミで悪評が広がる。上手な方法を先例から学ぶべきだ。

一つは価値の上昇を価格に反映させる道だ。料理や自然・文化体験では各国語の解説があれば価格は高めでも満足度は上がる。水上バスで特定の便だけ外国語ガイドを付け価格を上げた都市もある。ある有名寺院は礼拝なら無料、旅行者の多いバックヤードツアーは有料と区別している。

時間節約も価値になる。宿泊、飲食、体験をセットにし交渉や予約が不要な「オールインクルーシブ」型の高額旅行が富裕層に人気だ。米国では複数の観光施設で共通券を発行、価格は高いがすぐ入場できるようにした例がある。寺社などは早朝に特別料金で客を入れてはどうか。混雑せず満足度は上がり時間の有効活用にもなる。

サービス内容で差をつけにくい公共施設などにも方法はある。東南アジアでは外国人旅行者らは正規料金、自国民や居住する外国人は証明書を見せれば割引料金という施設が多い。英国でも有名観光地で「1日券」と「年間パス」を同額にする例が現れた。事実上、住民を割引にする手法だ。

公共施設の維持には税金が投入されていることが多い。二重価格は地元の人々の不満を和らげる効果がある。旅行者に対しては、差別を受けたと思われないよう、維持管理費などの背景を丁寧に解説する必要があろう。