バンブーズブログ

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[社説]世界の安定脅かす米議会混迷


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/5 2:00
 
連邦議会マッカーシー下院議長は史上初めて解任された議長となった=AP
連邦議会下院が野党・共和党を率いるマッカーシー議長の解任動議を可決した。解任は史上初めてで、後任が決まるまで法案審議の空白が続く機能不全に陥った。世界の経済や安全保障に重大な影響を与えかねない米議会の混迷を強く憂慮する。

動議は共和党の保守強硬派の議員が提出した。定数435の下院で与野党の一部議員は採決を欠席し、与党・民主党の208人と共和党8人が賛成した。反対は共和党の210人にとどまった。

強硬派が解任に動いたのは、政府機関の閉鎖を回避するための「つなぎ予算」を巡る党内対立がきっかけだ。大幅な歳出削減を求める強硬派の意に沿わない案をマッカーシー氏がまとめ、民主党の協力を得て9月末に可決させた。これに強硬派が反発した。

事態の正常化に向けた一義的な責任は共和党にある。下院議長は大統領職の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職だ。

今年1月の下院議長選出は4日間で15回の投票を経て決着。強硬派がマッカーシー氏の議長就任に反対したためで、1回の投票で決まらなかったのは100年ぶりの異常事態だった。後任選びで同じ愚を繰り返してはならない。

大半が解任に賛成した民主党には来年の大統領選や議会選をにらみ、共和党の内紛が自らに有利に働くとの計算が透ける。強硬派の求めに応じてバイデン大統領の弾劾調査を始めたマッカーシー氏の議事運営への不満も強い。

米議会は下院が共和党、上院は民主党がそれぞれ多数派を握る「ねじれ議会」で、政策決定は滞りがちだ。行き過ぎた反目が続けば政府閉鎖のリスクが再燃し、ウクライナによるロシアへの反攻にも支障を来しかねない。

先に成立したつなぎ予算の期限は11月17日までで、ウクライナ支援も入っていない。与野党は米国が世界の平和と安定に重責を担っているとの自覚を持ち、米国発の危機を避けるために妥協点を見いだしてもらいたい。