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2023/9/27 2:00
下院共和党トップのマッカーシー下院議長は政府閉鎖の回避に向けた打開策を見いだせていない=AP
米連邦政府予算を巡る議会の協議が難航し、政府機関が一部閉鎖となるリスクが高まっている。交渉期限の9月30日までに何らかの合意が得られなければ、米国の国民生活だけでなく世界経済や安全保障にも影響が及びかねない。
与野党はこうした事態を回避するよう接点を見いだすべきだ。
混乱の一因は下院で多数派の野党・共和党の内紛にある。保守強硬派を中心とする20人ほどが2024会計年度(23年10月〜24年9月)予算案の大幅な歳出削減やウクライナ支援の減額を求め、当面の予算執行に道を開く「つなぎ予算」にも反対している。
下院共和党を率いるマッカーシー下院議長は困難な手綱さばきを迫られている。強硬派が要求する歳出削減を受け入れたとしても、その予算案を与党の民主党が過半数を占める上院で成立させるのは極めて難しい。
半面、民主党と組んでつなぎ予算を成立させれば、マッカーシー氏は強硬派から議長の解任動議を突きつけられる可能性が浮上している。定数435の下院で共和党は過半数をわずかに3上回る221議席にすぎず、少数グループに振り回されやすい。
ホワイトハウスは声明で、政府閉鎖になれば米軍の活動や災害救援などに支障が生じかねないと警告した。雇用や物価など統計の発表が滞り、主要指標がないまま政府が政策判断を余儀なくされる可能性もある。
こうした混乱を避けるため、まず共和党が足並みをそろえ、民主党と妥協点を見いだす努力をしなければならない。民主党も歩み寄りの余地はあろう。次の大統領選をにらみ、バイデン政権への打撃をもくろむトランプ前大統領が強硬派をあおっているのも問題だ。無責任な言動は慎むべきだ。
米議会の機能不全の影響は米国内にとどまらない。格付け機関は政府閉鎖が米国債の信用にマイナスになると警鐘を鳴らしている。米国には内向きの政争にかまけている余裕はない。