バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]中東動乱に乗じたフェイクニュースの拡散を防げ


 
 
#イスラエルハマス衝突 #社説
2023/10/13 19:05
 
欧州連合EU)はX(旧ツイッター)のマスク会長らに誤情報対策の強化を求めた
中東情勢が緊迫するなか、X(旧ツイッター)などを通じて誤情報や偽情報が拡散することへの懸念が高まっている。不正確な情報が広がることにより、事態が一段と悪化しかねない。SNSの運営会社は社会的責任を自覚し、対策を急ぐべきだ。

NPOのメディアマターズによると、パレスチナイスラム組織ハマスイスラエルへの攻撃を始めた直後から、問題のある投稿が増えた。攻撃に関係があるように見せかけた動画の再生回数が数百万回に達し、バイデン米政権がイスラエルへの資金援助を承認したといった偽文書も拡散した。

欧州連合EU)はXに加え、フェイスブックTikTok(ティックトック)の運営会社に迅速な対処を求めた。Xの運営会社の調査も始めた。各社は投稿の監視にあたる人員を増やすなど体制を強化し、積極的に情報を開示する必要がある。

SNSが普及して多くの人が世界に情報を発信できるようになり、緊急時に草の根の協力を促すといった成果を生んだ。一方、社会を混乱させる事例も増えている。2021年には不正確な情報を信じた市民が米連邦議会議事堂を占拠する事件が起きた。

足元では精巧な画像や動画を自動でつくれる生成AI(人工知能)が発達し、本物そっくりの「ディープフェイク」が広がる。技術の急速な進歩を理解し、社会全体で対策を考えることが必要だ。

EUはIT大手に有害情報の取り締まりを義務付ける法律を成立させた。ただ、言論の自由や産業の発展との兼ね合いから法規制に慎重であるべきだとの指摘がある。米国は官民が協議してルールを設けようとしており、日本でもよりよい枠組みの整備に向けた議論を急ぎたい。

広告に予算を投じる企業の役割も大きい。Xの運営会社を米起業家のイーロン・マスク氏が買収するなど外部からの経営監視が難しくなるなか、予算の配分を見直すことで影響力を行使できるためだ。投稿の監視体制が緩いSNSに広告を出し続けることで、不正確な情報の拡散を助長していると自覚すべきだ。

一人ひとりの利用者もSNSの利用にまつわる基礎を徹底したい。情報源や発信者を確認するのはもちろんのこと、不正確な情報が流れていることを前提に注意深く使う必要がある。