バンブーズブログ

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[社説]観光地の混雑に抜本対策を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/20 19:00
 
著名な観光地に集中するインバウンド客の地方への分散が必要だ(8月、京都市
インバウンド(訪日外国人)観光の回復で、オーバーツーリズム(観光公害)に悩む例が広がっている。放置すれば地域の自然や生活環境、伝統文化が損なわれ、旅行者の満足度も低下する。政府がまとめた当面の対策は物足りない。一時的な現象ととらえず抜本的な対策を進めるべきだ。

原因は旅行者の増加だけではない。初来日の客が多く有名な場所に集中する。ガイド付きバスの名所巡りから個人旅に主力が移り、住民の生活圏に旅行者が増えた。ネット投稿で観光インフラのない場所に人が集まる。こうした複数の要因が重なった結果だ。

観光地や観光国としてのブランドイメージは、一度下がり始めると反転させるのは簡単ではない。日本が観光大国を目指すなら課題は芽のうちに摘みたい。

柱は訪日客が少ない地域への分散だ。付加価値の高い体験メニューや宿泊施設の整備に力を入れたい。自治体間の連携も大事だ。ドイツで小都市が協力し旅行者を誘致した「ロマンチック街道」や、州単位で個性を発信するイタリアの取り組みが参考になる。

個人旅はガイドに頼れない分、入国前にネットや機内ビデオなどでマナーや生活習慣を伝え、環境保護に協力を訴えるのも有効だ。リゾート開発と自然保護を両立させた島国などに先例がある。

政府はこれまで、旅の選択肢に日本を加えてもらうよう各国でPRに注力してきた。今後は観光地のブランド力向上や消費単価の高いリピーター育成にも目配りしたい。欧米からの旅行者は中国人の約2倍の日数を日本で過ごす。アジア依存脱却のためにも滞在中の満足度向上は必須の課題だ。

政府は先日まとめた対策で鉄道・バスの変動料金制導入を掲げた。しかし旅行者が多少の料金差で予定を変えるだろうか。出費増や通勤時間変更など地元住民の負担増も懸念される。住民の不満は観光地の持続的発展にはマイナスだ。目先の策よりも長い目でみた取り組みが求められる。