バンブーズブログ

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[社説]観光産業は生産性を上げる好機に


 
人手不足に克つ
#社説 #オピニオン
2023/8/20 19:05
 
外国人観光客らでにぎわう東京・浅草の仲見世商店街
宿泊、飲食、交通などの観光関連産業が人手不足に悩んでいる。新型コロナ禍で従業員を減らしたところへ旅行需要の復活が重なったためだ。低かった生産性の向上や賃金の上昇につなげ、強い観光産業をつくる好機にしたい。

旅行市場は急回復している。円安で海外旅行を見送る人も多く、日本人の国内旅行は好調だ。7月のインバウンド(訪日外国人)はコロナ前の8割近くに達し、中国からの団体旅行も再開した。需要を取りこぼさないために人手不足への対応は急務といえる。

しかし生産性や賃金が低いままでは必要な人員の確保は難しい。生産性が低い分野に従事する労働者が増えることは、日本全体にとっても望ましい話ではない。仕事の付加価値を増やし、賃上げにつなげる経営を目指すべきだ。

道の一つは提供するサービスの質に見合った値上げだ。東京ディズニーリゾートJR九州の豪華寝台列車は、受け入れ人数を抑えて満足度と単価を上げた。宿泊・飲食業界も、特にインバウンド向けはサービスの質を充実させ価格を引き上げる余地が大きい。

人員を接客にあてられるようバックヤードでのIT(情報技術)活用や業務の見直しを一段と進めたい。清掃時に使うリネン類をドア前まで運ぶロボットなどがすでに誕生している。

これまで国や多くの自治体は来訪者数を観光政策の指標にしてきた。欧州ではのべ宿泊者数を重視する。連泊や長期滞在が増えれば宿泊施設は予約や精算、清掃の負担が減り、飲食や娯楽など地域の消費が増えて交通の混雑緩和にもつながる。発想を転換したい。

賃上げや情報システム投資はコスト増を招く。観光業界は家族経営など小規模な企業が多く、一般に投資余力が乏しい。

強い観光産業をつくるには、経営統合による規模拡大も有力な選択肢となろう。後継者難から廃業し一等地に廃虚の残る町が目立つ一方で、運営にたけた企業に再生を委ね、地域の魅力を向上させる例が各地に誕生している。

地域の魅力をじっくり味わいたい旅行者が内外で増えている。全国各地に付加価値の高い観光産業を育てる好機だ。ライドシェアを解禁すれば、公共交通機関やタクシーの乏しい場所を旅行者が訪れやすくなるのではないか。