バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]「健康経営」に感染症対策を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/8 2:00
 
コロナ禍では職域接種により企業の感染症対策への意識も高まった
「健康経営」は会社が社員の健康維持や増進に積極的に関与し、生産性の向上にもつなげる取り組みだ。新型コロナウイルス禍を経験した今こそ、がんやメンタルヘルスに加え、感染症対策を健康経営に組み入れてはどうだろう。

新型コロナでは政府の協力要請もあり、ワクチンの職域接種が実施された。社員のほか家族やグループ企業、地域にまで対象を広げた会社もあった。職場でワクチンを打つことができ、便利さを実感した方も多いのではないか。

公衆衛生上、最も効果的な感染症対策がワクチンである。感染・発症を予防するだけでなく、感染力の強いウイルスの場合、職場で病気が広がるのを防ぐことにもなる。事業継続計画(BCP)を進める上でも重要だ。

ワクチンは乳幼児や子どもが接種するものと思いがちだが、医学の進歩によって大人でも打てば予防ができる病気が増えてきた。

例えば疲労やストレスで発症しやすくなる帯状疱疹(ほうしん)。ひどい痛みや発疹を伴う。命にかかわる病ではないが痛みが長引くと職場の復帰や仕事に支障を来す。50歳以上に接種費用を助成する自治体もある。企業も費用の補助や負担を検討してもいい。

風疹対策でも企業の果たす役割は大きい。かつての予防接種制度の都合上、1962〜79年生まれの男性に抗体を持っていない人が多い。2018〜19年の流行期では職場で感染が広がり社会問題になった。

症状は比較的軽く済むが、妊婦がかかると赤ちゃんに障害が出る恐れが出る。厚生労働省は「接種の空白期間」にあたる世代の男性に抗体の確認とワクチン接種を呼びかけてきたが、なかなか進展しない。企業が健康診断の際に抗体の有無を調べれば対策に役立つだろう。社会的な意義は大きい。

定年延長などで60代以降も会社で多くの時間を過ごす人が増えている。健康経営に予防接種の促進を盛り込めば、ひいては医療費の抑制にもなる