バンブーズブログ

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[社説]教団は被害救済に向き合え


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/11 2:00
 
最大100億円を原資とする供託金では被害救済に足りない(7日、東京都渋谷区の教団本部)=共同
政府が解散命令を請求した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、高額献金などの被害を救済する原資として、最大100億円を供託金の形で国に預ける方針を示した。法的根拠を欠く不可解な提案である。

被害者の不安払拭が目的なら、教団の財務情報を開示し、現預金や有価証券など救済の原資となる資産の全容を自主的に示すのが筋だ。そのうえで資産を意図的に外部に散逸させないことを約束し、裁判、裁判外の個々の返金請求に真摯に向き合うべきだ。

民法などが規定する供託とは、供託者が金銭などを国の機関に預け、債権者に取得させる制度だ。教団の資金集めを巡っては、損害賠償請求訴訟や裁判外の返金請求が多数あり、債権者や請求総額が確定していない。現行の供託制度の枠外である。

それにもかかわらず、教団が国に供託を求めたのは、与野党が検討している被害者救済に向けた財産保全立法の制定を回避する意図が疑われる、と被害者側の弁護士は指摘する。

教団側は昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件以降、664件、44億円の返金要請に応じたと説明している。解散命令の請求で、返金の要求はさらに増えよう。

教団は巨額の献金を集めており、潜在的な被害額は1000億円を超す、との指摘もある。100億円の原資では不十分だ。

教団は過去に信者から献金を受ける際、領収書などを発行しておらず、弁護士らによる被害実態の把握が困難だった。その点で宗教法人を所轄する文化庁の情報開示が重要になる。オウム真理教事件を契機に改正された宗教法人法は、宗教法人に財産目録などの提出を義務づけているからだ。

だが、文化庁は教団に関する情報の開示について、信教の自由を理由に、請求があっても原則、非開示としている。社会的に問題がある法人も、非開示とする合理的な理由はあるのか。情報開示のあり方も議論する必要がある。