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2023/12/17 19:00
旧統一教会の被害者救済に向けた特例法案が可決、成立した参院本会議=13日
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けた特例法が臨時国会で成立した。
解散命令請求を受けた宗教法人の財産処分を監視し、日本司法支援センター(法テラス)を通じた被害者の民事訴訟の支援強化などを柱とする自民・公明・国民民主3党の議員立法である。
被害者救済に一定の効果が期待できる点は評価したい。実効性を不安視する声もあり、教団の不当な財産処分を抑止する適切な法の運用が今後の課題になる。
一方、被害者や支援弁護団が求めていた包括的な財産保全策を盛り込んだ立憲民主党と日本維新の会の法案は否決された。会社が解散命令請求された段階で資産保全が可能な会社法の規定を準用していた。しかし、自民などは信教の自由や、財産権を侵害する恐れがあるとして、修正協議でも保全の規定を受け入れなかった。
衆院法制局長は立維の法案について、「財産規制も憲法の許容するところであり、十分説明可能な立論」と答弁した。法律の専門家を参考人として国会に呼び、どのような条件のもとで財産保全が許容されるのかについて議論が尽くされなかったのは残念だ。
信教の自由を侵す恐れがあると抽象的に説明するだけでは、精神的、財産的な苦痛を受けた被害者は納得しない。例えば宗教法人の組織的不法行為を認定した確定判決の有無などの基準を設け、対象を海外送金に限るといった財産保全の要件を絞り込み、合憲性を熟議する道もあったはずだ。
ただ、修正協議で特例法の付則に施行後、財産保全のあり方を含めて検討することを明記した。
国会審議では、過去にオウム真理教に解散命令が請求された際、教団が所有する不動産を関連団体の名義に移す「財産隠し」があったことが指摘された。
行政や立法府は教団の財産処分の動向を常に監視し、資産隠しの疑いがあれば、それを防ぐ具体的な手立てを講じる責務があることを肝に銘じてほしい。