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2023/11/11 2:00
破綻した米ウィーワークは「ユニコーン」の象徴だった =AP
未上場ながら企業価値が10億ドル(約1500億円)を超える「ユニコーン」ブームの象徴だったシェアオフィス大手の米ウィーワークが経営破綻した。世界のベンチャー企業はこれを警鐘と受け止め、利益を伴った成長を早期に確立する必要がある。
ウィーワークは楽観的な事業計画でソフトバンクグループ(SBG)傘下のファンドなどから巨額資金を調達し、2019年のピーク時には企業価値が470億ドルに達した。だが、赤字体質から抜け出せず、金利高も受けて経営が行き詰まった。
SBGは4〜9月期に約2344億円の関連損失を計上した。SBGにはウィーワークの評価を見誤り、大株主として再建できなかった責任がある。9月には、同じく出資する英半導体大手のアームがナスダック市場に株式を上場したが、株価は上場時の価格を下回る水準で推移している。
大手会計事務所のKPMGによると、4〜6月期の世界のベンチャー投資額は814億ドルと前年同期に比べてほぼ半減した。ベンチャーキャピタルが投資先を選別する動きは続くとみられる。各国の金融引き締めも長期化し、株式上場も難しい。ベンチャー各社は資金調達の環境が改善しないことを前提とすべきだ。
まず多額のリスクマネーに頼らずに成長できる事業構造に転換する必要がある。これまでは事業の拡大スピードが重視されたが、今は利益の創出力が求められる。ライバル企業との合併や、大企業への身売りといった大胆な戦略も選択肢になるだろう。
ベンチャー投資家は投資先への経営指南をこれまで以上に強めて有望企業の成長を支援すべきだ。ベンチャーが前回の資金調達時より自社の企業価値を割安に見積もって追加資金を調達する「ダウンラウンド」も増えている。
ユニコーンへの投資ブームに乗り遅れた投資家には、投資先を見極めて割安な価格で資本参加するチャンスでもある。特に日本の大企業などは、有望な技術やサービスを持つ世界のベンチャー企業との連携を深めたい。
一方、市場が拡大する生成AI(人工知能)関連のスタートアップに米巨大IT企業が巨額資金を出資するケースも出てきた。日本の投資家も長期の視点に立ち、慎重かつ大胆に資金を投じて新たな流れを逃してはならない。