バンブーズブログ

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[社説]足並みの乱れ露呈した産油国


 
 
#経済 #経済 #社説
2023/12/5 19:00
 
アフリカ勢の反対で、OPECプラスは協調減産に合意できなかった(ウィーンのOPEC本部)=ロイター
石油輸出国機構OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は、一部のメンバー国が来年1月から自主的な取り組みとして日量220万バレルを減産すると表明した。世界の石油需要の約2%にあたる。

焦点だった全体の生産目標の引き下げは合意できず、産油国間の足並みの乱れを露呈した。

昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後、米市場で一時は1バレル130ドルを超えた原油相場は、世界景気の減速で下落傾向にある。OPECプラスは協調減産や自主減産を重ね、価格を下支えしてきた。

ところが米国などの増産がその効果を相殺し、米国や中国の経済の先行きも不透明感が増す。最近は多くの産油国の財政収支均衡に必要な80ドルを下回っている。

11月30日に開いたOPECプラスの閣僚級会合で、サウジアラビアは協調減産の一段の拡大を求めたものの、生産量を維持したいアフリカ諸国が反対に回った。

代わりに打ち出したのが、メンバー23カ国のうち有志8カ国による自主減産の継続・強化だ。サウジとロシアは年末で終えるはずだった減産を来年3月まで延長し、イラクアラブ首長国連邦UAE)など6カ国が追加実施する。

現状と比べた実質的な供給削減は日量90万バレルにとどまり、自主減産には実行を監視する仕組みもない。市場では需給引き締まりに懐疑的な見方が広がり、足元の価格は73ドル程度で弱含んだままだ。

原油価格が下がれば、インフレ克服が課題の消費国には望ましいが、手放しでは喜べない。原油の価格変動に一喜一憂せず、脱炭素を着実に進める必要がある。

イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に対する反発などを理由に、政治的な思惑で価格つり上げに走ることがないよう、中東産油国に自制を求めたい。

脱炭素への移行期間において、原油の安定供給を量と価格の両面で守ることは重要だ。産油国と消費国は双方が折り合える水準を探る努力を続けるべきだ。