バンブーズブログ

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[社説]ダウ4万ドルが映す企業の持続成長に学べ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/18 19:05
 
「ダウ4万」のキャップをかぶるニューヨーク証取のトレーダー=ロイター
米国の最も代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均が17日、終値で4万ドルの大台に初めて乗せた。足元の上昇はインフレの鈍化や利下げ観測を背景にしたものだが、長い目で見れば米国企業の持続的な成長を反映している。

日経平均株価が約34年前の水準にようやく戻った日本に対して、同期間に株価が約15倍になった米株式市場のダイナミズムが示唆するものは大きい。経済の活力を取り戻すために、市場の力を使った日本企業の改革が一段と迫られていると受けとめたい。

ダウ平均は1999年3月に1万ドルを初めて上回った後、2017年1月に2万ドル台、20年11月に3万ドル台に乗せた。数々の危機や暴落を乗り越え、長期にわたって上昇基調を保ってきた大きな理由は、米産業界が顔ぶれを変えつつ、全体として成長を続けてきたからにほかならない。

かつては重厚長大企業が多かったが、近年は急成長のテック企業が目立つ。今年2月にダウ平均に採用された1994年創業のアマゾン・ドット・コムは、生成AI(人工知能)開発に傾斜し、時価総額は約2兆ドルだ。

足元の米株式市場はアマゾンのほかマイクロソフトなど一部のテック関連に人気が集中し、急ピッチな上昇への警戒感は強い。

とはいえ、特定業種だけに注目すると実相を見誤る。1886年の創業で、「我が信条(アワ・クレド)」という企業理念で社会的責任を強調しつつ、積極的な買収で成長してきた医薬品・医療機器大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのような企業も健在だ。

米国企業は株主への短期の利益配分に傾きすぎているとの批判も日本には根強い。しかし、生命保険協会の調べでは、米企業は1997年から2020年までに研究開発費を2.2倍に伸ばした。日本企業は1.3倍だ。

株主の力がはるかに強い米国の方が、企業は先行投資を怠らず、株価の持続的な上昇を通じて富が社会に還元される構図に注目したい。米国の家計は株式保有が多く、株高や配当などを通じた金融資産からの所得が厚い。

先行投資の成果はいかに資本を有効に使って利益をあげているかを示す自己資本利益率ROE)に表れる。米国企業は約20%と日本の2倍だ。この差は長らく埋まっていない。資本の大切さを米国の株高は改めて教えている。