バンブーズブログ

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[社説]EUはウクライナ支援で結束を強めよ


 
 
#ヨーロッパ #国際 #社説
2023/12/17 19:05
 
戦況は膠着に陥った(6日、国内での軍事訓練に参加するウクライナ兵)=AP
欧州連合EU)がウクライナの加盟交渉を始めることを決めた。2022年にロシアの侵攻を受けた直後に申請してから2年もたたない異例のスピードでこぎ着けた。EUには民主主義や法の支配を守る立場を世界に発信するねらいがある。実現に向けた課題は多く、価値観をめぐる欧州の結束が問われる。

全会一致を原則とする加盟交渉入りは、EU首脳会議でハンガリーのオルバン首相がぎりぎりまで反対し最後は採決を棄権して決まった。24年から4年間で500億ユーロ(7兆7500億円)のウクライナへの資金支援はオルバン氏が反対を貫き、EUとして合意できなかった。

EUハンガリー向けの補助金の支払いを再開することで妥協をうながした。オルバン氏が国内の司法の独立を脅かした理由で凍結されていたものだ。同氏の「ごね得」を許したという不満は他の加盟国にくすぶっている。

一部加盟国の機会主義的な行動による混乱を避けるため、EUには意思決定の方式を見直す議論がある。加盟国が拡大すれば全会一致は一段と難しくなる。一定数の賛成で決まる「特定多数決」の適用拡大など表決ルールの緩和を検討すべきだろう。

ウクライナは加盟交渉の過程でEU水準の法体系を導入するため国内の改革を進める必要がある。汚職の排除や法の支配の強化を経済の繁栄につなげるべきだ。そうすればプーチン大統領の強権支配の下で経済の停滞感が強まるロシアの国民にも、法治主義や民主主義がもたらす利益の大きさを示すことができる。

6月に始まったウクライナの反転攻勢は思うような成果をあげられず、戦況は膠着状態に陥っている。ゼレンスキー大統領は「停戦や紛争の凍結は選択肢ではない」と述べており、戦争は長期化が避けられない情勢だ。

ウクライナ支援では米国でも野党・共和党の反対によりバイデン大統領が提案した支援策が宙に浮いたままだ。米国の支援をつなぎとめる意味でもEUウクライナへの支援を続ける必要がある。

欧州統合の出発点には、ドイツとフランスの確執が2度の大戦につながったことへの重い反省があった。戦火の犠牲をかえりみず力で領土を変える試みを阻止することは、EUの存在意義にかかわる問題だ。