バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

2024年は米大統領選をはじめ国際秩序を方向付ける重要な選挙が相次ぐ

[社説]対立乗り越え民主主義の強さ示せ
 
選択の2024
#社説 #オピニオン
2024/1/5 2:00
 
2024年は米大統領選をはじめ国際秩序を方向付ける重要な選挙が相次ぐ
振り返れば、あの年が世界のありようを決定づける転換点になった――。歴史にそう刻まれるかもしれない重要な選挙が今年はいくつもある。

ウクライナ戦争や中東危機は国際社会の分断と対立を深め、繁栄をもたらしてきた自由や法の支配に基づく国際秩序がもはや当たり前ではないと思い知らせた。ポピュリズムの火種は各国にくすぶり、民主主義を脅かしている。

多国間協調へ努力を

選挙を通じてその流れを食い止めるのか、混迷を加速するのか。今年はその分水嶺となる。分断を協調に転じ、民主主義の強さを示すチャンスとしたい。

とりわけ注目を集めるのが11月の米大統領選である。再選をめざす民主党のバイデン大統領に挑む共和党の候補は、同氏に敗れた2020年選挙の雪辱を期すトランプ前大統領が有力視される。

バイデン氏は主要7カ国(G7)の結束を立て直し、ロシアが侵攻を続けるウクライナへの支援を主導した。中国への包囲網づくりの一環で英国、オーストラリアとの「AUKUS」(オーカス)、日米韓といった多国間の安全保障協力の構築に力を入れた。

同盟関係を軽視するトランプ氏が復帰すれば、こうした協調体制は瓦解しかねない。3月のロシア大統領選で5選が確実なプーチン大統領を利し、中国の強権姿勢を助長する恐れがある。

ウクライナ支援の継続を巡って対立を深める米議会は接点を見いだす努力をしてほしい。大統領選を前にした与野党の批判合戦はやむを得ない面もあるが、暴力はもってのほかだ。トランプ氏支持者らによる連邦議会占拠事件の愚を繰り返してはならない。

米国が民主主義国家のリーダーとして健全性を示せるのかを中国はみている。当面の中台関係を左右する今月13日の台湾総統選とも連動し、武力統一を排除しない中国の判断に影響を及ぼす。

台湾総統選は中国がSNSを通じた偽情報の拡散などで影響力の行使を試みていると指摘される。ロシアも6月の欧州議会選をにらみ、極右勢力の伸長を後押ししている疑惑がある。こうした世論工作への対策の強化は、民主主義を下支えするうえで急務だ。

大事なのは米大統領選の結果を問わず、多国間協調の維持に努めることだ。日本は欧州や豪州、韓国といった同志国による連携を引き続き強化すべきだ。ウクライナ支援はもちろん、自衛隊と各国軍の共同訓練や災害救助などで平時から協力を深めてほしい。

国際社会で発言力を高めるグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)への関与強化も欠かせない。その中核をなすインドネシアは2月に大統領選、インドは4〜5月に総選挙がある。

いずれも多くの人口を抱える民主主義国家とはいえ、言論統制や異教徒の抑圧などで近年は民主主義の後退が懸念される。中央アジアでは、選挙が強権体制を固める手段に使われる例も目立つ。

中国の習近平国家主席共産党統治の優位を訴える。確かに権威主義体制は迅速な意思決定をしやすい。しかし権力の一極集中に大きなリスクがあるのは、ゼロコロナ政策の失政をみても明らかだ。

「法の支配」を旗印に

昨年のG7議長国、日本が民主主義陣営の一角として果たすべき役割は大きい。外交の基本原則として掲げる法の支配や主権、領土の一体性の尊重は、必ずしも民主主義国ではない多様なグローバルサウスの国々も受け入れやすい。こうした考え方を国際社会が協調を取り戻す旗印としてほしい。

足元をみれば9月の自民党総裁選に向けた動きが活発化し、衆院解散・総選挙の時期とも絡む駆け引きが強まる見通しだ。

岸田文雄首相は4日の年頭会見で「世界が日本の安定と外交力の発揮を求めている。今後の10年を決める分かれ道の年を迎えたといっても過言ではない」と述べた。

人口減や危機的な財政状況に直面する日本に、内向きの権力闘争に時間を費やしている余裕はない。次世代を見据えた中長期の視点の政策実行が求められる。

政府が打ち出した所得税減税には厳しい評価が目立つ。将来不安の解消につながる骨太の議論を通じ、課題を解決してほしいとの意識がうかがえる。政治はこうした声に真摯に向き合う責任がある。