バンブーズブログ

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[社説]ウクライナ和平への決意を強固に


 
 
#社説 #オピニオン #ウクライナ侵攻
2024/2/24 2:00
 
17日、ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で支援強化を訴えるウクライナのゼレンスキー大統領=AP
ちょうど2年前の2022年2月24日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた。戦闘は長期化し、米欧を中心とする支援国やウクライナ国内では疲弊や足並みの乱れがみられる。いまこそ和平を早く実現し、侵略者から国際秩序を守り抜く決意を新たにしたい。

この1年で楽観論は鳴りをひそめた。23年6月に始めたウクライナ軍の反転攻勢は失敗し、国土の約2割にあたる占領地を奪還できなかった。それでも、ロシア軍の全面撤退という共通の目標が揺らぐことがあってはならない。

国際秩序を守る戦い

ロシアが勝てば世界はどうなってしまうのか。すべての国と人々はもう一度よく考えてほしい。

ロシアや中国、イラン、北朝鮮といった権威主義国家は連携して勢いを増し、各地で脅威と混乱を広げるだろう。米国第一のトランプ前米大統領が復帰すれば、そうしたシナリオは現実味を帯びる。

偏狭な国家主義の台頭や人権抑圧を容認する国々が増え、自由と民主主義は脅かされる。武力で外交上の懸案を打開しようとする危うい風潮はすでに中東やコーカサス地方に及んできた。だからこそロシアを勝たせてはならない。その最前線で戦うウクライナへの支援を緩めることも許されない。

とりわけ最大の援助国である米国の支援がこれ以上滞れば、ウクライナ軍の砲弾が底を突く恐れがある。米共和党民主党のバイデン政権が提案する追加支援を盛った予算案に反対を続ける。

11月の米大統領選を前に内向き志向を強める米社会が、インフレや不法移民といった国内の課題を優先しがちなのはやむを得ない面がある。ただ、なりふり構わず反対する共和党の姿勢には首をかしげざるをえない。バイデン政権の足を引っ張りたいトランプ氏の影響がすでに表れているようだ。

ウクライナ支援が頓挫してロシアの侵略を許せば、法の支配に基づく国際秩序が崩れ、米国自身の国益に打撃を与える。民主、共和両党はその重責を自覚し、支援継続に向けた妥協点を見いだす努力を諦めないでもらいたい。

日欧も米国任せにせず、より大きな役割を果たしていく必要がある。岸田文雄首相はウクライナ侵攻について「いかなる地域にとっても対岸の火事ではない」と訴えてきた。東アジアで中国は台湾への威圧を繰り返し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速している。

日本が経済復興推進会議で長期のウクライナ支援に取り組む姿勢を示したのは適切だ。それは東アジアで法の支配を損ねる蛮行は許さないとのメッセージでもある。

欧州連合EU)もウクライナ支援に手を尽くしているといえるだろうか。ハンガリーの反対で難航した500億ユーロ(8兆1千億円)の支援にはようやく合意できたが、ウクライナが戦線を維持するには不十分だ。約束した砲弾の供給は目標に届かない。

西側諸国、中国・ロシアのいずれの陣営にもくみしないグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国への働きかけは引き続き重要だ。ブラジルで開いた20カ国・地域(G20)外相会合で、これらの国々の多くは侵攻に関し中立的な立場を崩さなかった。

多様な統治形態をとるグローバルサウスの国々に、頭ごなしに白か黒かを迫るようなやり方は得策ではない。エネルギーや気候変動といったニーズに応じた実務的な協力関係を深めつつ、中ロの陣営に追いやらずに国際協調を取り戻す努力を続けるべきだ。

民主主義陣営は結束を

ウクライナの内政にきしみが生じているのは大きな懸念材料だ。ゼレンスキー大統領は8日、国民の人気が高いザルジニー総司令官を解任した。追加動員の法改正の検討も国民に不安を与えている。国内が一丸となって国難にあたる努力を緩めず続けてほしい。

ロシアのプーチン政権が盤石というわけではない。異論を許さぬ戦時統制で安定を保っているにすぎない。3月の大統領選で圧勝を演出して侵略を正当化しようとしているが、国民の間では戦争を続ける政権への不満がくすぶる。

ロシアの独立系調査機関による1月の世論調査によると、「和平交渉を始めるべきだ」との回答が52%を占めた。プーチン氏は領土拡張の野望を捨て、和平を望む声に耳を傾けるべきだ。

「24年はルールに基づく国際秩序を完全に取り戻す時となるべきだ」。ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議で、ゼレンスキー氏はこう訴えた。かつてない危機に直面する民主主義陣営の結束が改めて問われている。