バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]巨大祭典の招致は再考の時だ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/11 19:00
 
五輪を招致する意義が問われている(札幌市の大倉山ジャンプ競技場のモニュメント)=共同
札幌市が冬季五輪の招致活動を停止した。開催地に選ばれる可能性が当面なくなったためだ。東京五輪以降の国際イベントを巡る様々な混乱は、巨大な祭典との向き合い方を改めて問うている。

国際オリンピック委員会IOC)は昨年11月、2030年冬季大会の候補地をフランスのアルプス地域、34年大会は米ソルトレークシティーにそれぞれ絞った。さらに38年についてもスイスと優先的に交渉するという。

札幌が事実上38年まで外されるという今回の決定は、札幌市や日本オリンピック委員会JOC)にとって想定以上に厳しい展開といえる。この間のIOCとの意思疎通や情報収集体制に問題がなかったか、検証作業を十分に行う必要がある。

招致が不調に終わった最大の要因は、何より市民の支持が盛り上がらなかったことだ。

東京五輪を巡る汚職・談合事件が、招致の機運に水を差したと指摘されている。確かにタイミングが悪かった側面はある。ただ問題の根本は、東京大会の不祥事を経てもなお、日本でふたたび冬季五輪を開くことの意義を明確にできなかった点にあろう。

五輪開催を機に、公費投入も含めて老朽施設やインフラを刷新する。招致の過程ではそんな思惑も見え隠れした。高度成長期の前回札幌大会から既に半世紀あまり。旧態依然とした発想から抜け出せず、現代版の新しい五輪像を描けないのなら、市民の支持が得られなくても致し方あるまい。

大阪・関西万博も度重なる費用の膨張をはじめ問題が相次いでいる。国と地方の財政難に歯止めがかからないなか、巨額の公費負担を伴う大規模イベントに注がれる国民の視線は、今後さらに厳しくなるに違いない。

社会の価値観は多様化が進む。人口が減り、成熟した社会のあり方が問われる時代だ。そんな中で国を挙げて巨大祭典を招致する意味は何なのか。立ち止まって再考する好機ではないだろうか。