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電力市場は不断の見直しを

社説]電力市場は不断の見直しを
 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/24 19:00
 
2016年の電力小売りの全面自由化で多様な事業者が参入した(電力の営業をする東急電鉄の駅員、東京都世田谷区)
公正取引委員会が電力市場の競争環境について調査結果を公表した。大手電力会社が自前の発電所を持たない新電力事業者に対し、電力の転売を禁じるなどの制限を設け、電力調達で不利になる事例が確認された。新電力にも電源へのアクセス機会を均等に確保するよう提言している。

電力自由化の目的は需要家に多様な選択肢を用意し、事業者の競争を通じて電力コストを抑制することだ。事業者間の公平な競争環境の重要性は言うまでもない。

2016年の小売り全面自由化から4月で8年となる。効率的な電力市場の実現へ不断の見直しが欠かせない。

電力大手は現在も発電設備の約7割を握る。発電所を持たない新電力は販売用電力の調達をこうした大手に頼らざるを得ない。

調査によると、一部の電力大手が新電力との相対契約において、調達した電力の第三者への転売を禁止したり供給区域に制限を設けたりするなどの事例があった。こうした制限は独占禁止法に抵触する恐れがある。

一方的な制限は公平競争を損なう。電力各社が24年度以降の契約について制限条項の解除や緩和を約束したことは当然だ。電力・ガス取引監視等委員会はこの実行を詳細に監視する必要がある。

電力大手の小売部門が電力の調達価格を下回る電気料金を設定した事例もあった。仮に小売部門の安値攻勢を発電の利益で穴埋めする「内部相互補助」がまかり通るようなら、新電力が対抗するのは困難になる。

電力大手は発電と小売部門の内部取引について疑念を持たれないよう行動で示さねばならない。報告書は中長期的に発電と小売部門がそれぞれ損益計算書を作ることや、発電と小売部門を別会社に分ける「発販分離」も考える必要があるとしている。

電力大手が自社への供給と新電力への卸販売を同等に扱う内外無差別の原則を、改めて徹底することが公正競争の土台である。