バンブーズブログ

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[社説]成功のH3これからが正念場


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/18 2:00
 
H3ロケットの打ち上げに成功し喜ぶJAXAの山川理事長(左から2人目)ら関係者(17日、種子島宇宙センター
宇宙航空研究開発機構JAXA)が新型ロケット「H3」2号機の打ち上げに成功した。「H2A」の後継で、今後の日本の宇宙開発の要となる。昨年の1号機の失敗を1年で挽回した関係者の努力を評価したい。

今回の成功はスタートラインに立ったにすぎない。世界のロケット市場で一強状態の米スペースXの背中は遠く、ライバルも多い。正念場はこれからで、競争力を高める戦略と努力が不可欠だ。

能登半島ウクライナパレスチナ自治区ガザでは衛星を活用した通信網が活躍する。地上のインフラが寸断される非常時でも、電源とアンテナがあればコミュニケーションを確保できる意義は大きい。その衛星の運搬手段として国産ロケットの重要性は増す。

ロケットには信頼性とコストの条件が課せられる。スペースXは2022年に61回、23年に96回打ち上げ、いずれも成功させた。第1段エンジンを再利用することで、コストを約65億円に抑えた。

H2Aも失敗はごくわずかで信頼性は高かった。ただ約100億円の打ち上げコストでは競争力に劣り、政府系案件の受注が大半だ。H3は部品を大幅に減らし、民生用機器を積極採用するなどの工夫に取り組んだ。約50億円という目標を早期に達成するとともに、実績を積む必要がある。

課題となるのが国内のロケット発射場不足だ。H3の発射場は1カ所しかなく、年6回の打ち上げが限界とされる。顧客の要望に沿った柔軟な打ち上げは難しい。

スペースXは米政府と協力し、複数の発射場を確保している。関連施設の整備費用は同社が負担した。日本でも小型ロケット向けの発射場の整備は北海道や和歌山などで進む。大型についても政府や企業は積極的に投資すべきだ。

ウクライナ危機以降、ロシアが西側諸国の衛星の打ち上げを拒み、ロケット不足が続く。スペースXの「次」を狙う国際競争も激しい。世界で勝ち抜く戦略とそれを実践する意志が肝要だ。