バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]GX国債の発行を機にネットゼロ加速を


 
 
#カーボンゼロ #社説
2024/2/18 2:00
 
GX国債の海外投資家向け資料
2050年の温暖化ガス排出実質ゼロの実現に向け、政府が「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」の発行を始めた。今後10年間で20兆円規模を調達し、産業構造の転換につながる技術や設備に投資する。

資金使途を太陽光など再生可能エネルギー発電に絞らず、脱炭素化への「移行(トランジション)」を前面に出した国債の発行は、世界でも初めてという。市場の目を十分に意識し、GX国債の発行を軌道に乗せることにより、ネットゼロ社会の実現に向けた歩みを加速させてほしい。

初年度は1.6兆円の発行を予定している。このうち9000億円弱を水素製鉄などの研究開発に、7000億円強を蓄電池など脱炭素に不可欠な製品の生産拡大や導入支援に、それぞれ充てる。

14日に実施された10年債の入札は、利回りが予想ほど低くならず、政府の移行計画が十分な信頼を得ているとは言えない結果だった。今後も円滑な発行を進めるうえで、いくつかの課題を示唆したと見ることもできる。

第一に、市場の理解を深めることだ。財務省などは今回の発行に向けて欧米各国を回り、GX国債の考え方を説明した。しかし、一部の欧州投資家は「日本のGX戦略は石炭火力の延命につながりかねない」と懸念する。日本の計画を粘り強く説明し、理解を得る努力が欠かせない。

第二に、お金の使われ方に関する説明だ。GX国債の調達資金がどの事業にどれほど使われ、計画は予定通り進んでいるかなどについて、分かりやすい報告をしてほしい。

GX国債での調達資金が投じられた事業が、温暖化ガスの排出抑制にどの程度貢献したのかも具体的に開示する必要がある。

第三に、償還財源の具体化だ。政府は企業の二酸化炭素(CO2)排出に課金するカーボンプライシングの手法を使う予定だが、細部まで詰められているとは言いがたい。財源が曖昧なままでは普通の赤字国債と同列視され、制度への信認が揺らぐ。

日本がネットゼロ社会を実現するためには150兆円の投資が必要とされ、民間資金が欠かせない。その呼び水となるGX国債を政府が円滑に発行し投資を続けることは、脱炭素を通じ持続可能な経済成長を促していくという意味できわめて重要だ。