バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

「日本人が買い負けする悪い円安を阻止せよ」

【小宮 一慶】

新年度となり、新入社員研修や講演、お客さまの経営方針発表会参 加などのために、大阪、京都、松本、金沢などに出張しましたが、 どこでも外国人の多さに驚かされます。3月の訪日客数が月として はじめて300万人を超えるという報道がありました。 オーバーツーリズムの問題も指摘されていますが、それだけでなく 、原材料などの輸入物価の上昇も懸念されています。この原稿を書 いている時点で154円まで達した円安が大きな原因で

す。
オーバーツーリズムからお話しすると、先日訪れた京都では、リー ズナブルな値段でホテルをとることすら難しくなっています。ちょ うど桜のシーズンと重なったこともありますが、かなりの料金を支 払って京都駅近くのホテルに泊まりました。初めてのホテルだった のですが、泊っている人のほとんどは外国人で、100名ほど入る 朝食会場も、白人の団体客で一杯でした。
前日にお客さまと行ったリーズナブルな価格の焼肉屋さんも、ほと んどが外人客です。外国人の家族が、スマホで予約画面を見せなが ら入店しているのが印象的でした。日本人が「買い負け」 しているのを否が応でも感じます。
その前日に、当社主催のセミナーのために大阪でリッツカールトン に泊まりましたが、朝食会場では私以外は全員が外国人でした。ホ テルは外国人客が増えたこともあり、どこも強気でかなりの値上げ をしており、日本人が泊まるにはかなりの負担となりますが、この 円安では外国人から見ればリーズナブルプライスに映るのでしょう 。ここでも日本人は「買い負け」状態です。
少し前に、アメリカをビジネスのために訪れた当社のお客さまが、 地方都市のホリデーインが1泊700ドルほどだとおっしゃってい ました。ホリデーインはそれほど高級ホテルではありませんが、今 のレートなら10万円を超えています。それに比べれば、日本の高 級ホテルやレストランは外国人から見れば格安です。
先日、テレビでゴールデンウィークの旅行先のインタビューをして いましたが、街頭インタビューを受けた複数の人が、「海外にはと ても行けない」と言っていました。今の相場では、海外旅行はとて もお高く感じます。
もちろん、それだけではありません。原材料費やエネルギーコスト がやはり円安のせいでじりじりと上がっています。大企業ならまだ それを吸収する余地がある程度はあるかもしれませんが、中堅・ 中小企業にはかなり厳しいものがあります。
一方、海外で活躍する大企業などでは、円安で利益額の円換算が増 えて良いのですが、ただ、そのもうけが日本に還流されず、海外に とどまるという問題も指摘されています。
日本経済はやはり日本国民の幸せや満足度を最優先するべきではな いでしょうか。外国人に「買い負け」したり、日本人の負担が増す ような経済政策は許されるべきではないと思います。
とくに日本銀行には、介入などの小手先の方法だけではなく、マイ ナス金利解除に続き、金利水準をある程度「正常」に戻すことで、 円安を阻止してもらいたいと心より願っています。