バンブーズブログ

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人口減対策と地域の持続性確保を

[社説]人口減対策と地域の持続性確保は両輪で
 
 
#出生率少子化 #社説
2024/4/25 19:05
 
リモートワークの定着で地方で子育てをする若い世代も増えつつある(和歌山県白浜町
2050年に市区町村の4割が消滅しかねないという報告を民間の「人口戦略会議」がまとめた。地方の人口減少の深刻さを改めて浮き彫りにする内容だ。政府が地方創生に取り組んで10年になるが、その政策効果に疑問を投げかけたといえよう。

地方創生は地方への移住を重視したため、自治体間の人口争奪を促すにとどまり、全体の出生率向上につながっていない。人口対策としては出生数の3分の1を占める首都圏の少子化対策が別に必要だ。地方の持続性を高める政策は、人口問題と切り分け、両輪として取り組むべきである。

報告によると「消滅可能性自治体」は前回の14年の896から744に減った。厳しい状況は変わらないとみるべきだが、それはどの自治体も身に染みていよう。危機感をあおるショック療法を何度も使うのは感心しない。

前回報告を契機に始まった地方創生は、60年に人口1億人の維持を目標とし、そのために人口の東京一極集中に歯止めをかけることを掲げた。出生率の低い東京圏に地方から若い女性が集まることが人口減少を加速させるとの問題意識からだ。

しかし、女性の就労率が高まれば、希望する仕事の多い東京圏に出ていくのは自然の流れだ。それを前提に地方のあり方を考えねばならない。

人口が減る地方で行政機能を維持するために考えられるのが、市町村合併道州制といった自治体の再編だ。だがこれらは合意形成に相当な政治的エネルギーを要する。目の前の業務が山積する現状では、大きな困難を伴う。

それよりデジタル化を通じて自治体業務を共通化し、複数の自治体が共同で担ったり、都道府県が肩代わりしたりする広域連携を探っていくのが現実的だ。これらが進めば、その先に合併機運が醸成される余地も生まれよう。

行政コストを下げるため、人々がある程度まとまって住むことも必要だ。居住地などを集約するコンパクトシティーは1世代30年かけて進めていく政策だが、足元でも市街地のマンションに集住する動きが広がりつつある。福祉や防災面からも望ましい傾向であり、こうした流れを後押ししたい。

人口減対策や地域の持続性を高める政策は息の長い取り組みが必要だ。消滅か否かに一喜一憂せず、地道に着実に進めてほしい。