バンブーズブログ

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[社説]広がる地価上昇の先行きに注視が必要だ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/20 2:00
 
熊本県の台湾積体電路製造(TSMC)の工場の周辺は地価の上昇が著しい=共同
地価の上昇が全国的に広がってきた。インバウンド(訪日外国人)回復で上昇地点は地方にも広がり、新型コロナウイルス禍以前の水準に近づく地域も増えている。ただ金利の動向や世界経済の見通しは不透明な面があり、地価の先行きを注視したい。

国土交通省が19日公表した7月1日時点の基準地価によると、全国の地価は全用途の平均で1.0%上昇した。全用途、住宅地、商業地とも2年連続の上昇で、伸び率も拡大した。回復に力強さが戻ってきたとみてよいだろう。

特に三大都市圏以外の地方圏は全用途と住宅地が31年ぶりに上昇に転じた。札幌、仙台、広島、福岡の4都市が引き続き高い伸びをみせており、それ以外の地方都市も長らく続いた下落基調から抜け出しつつある。

高い伸びをみせたのが半導体工場が新設される地域だ。住宅地と商業地の上昇率の全国上位はラピダスが次世代半導体工場を建設する北海道千歳市と、台湾積体電路製造(TSMC)の工場に近い熊本県大津町の地点が独占した。

ただ地方をよくみると、上昇地点は観光地や半導体工場、県庁所在地などに目立ち、地方圏全体では下落地点が半数を超えている。コロナ前に進みつつあった地価の二極化が回復局面に入って鮮明になってきた形だ。上昇地点であがる税収を下落が続く地域の保全に使うなどの工夫が求められる。

東京圏など大都市の需要は引き続き旺盛だ。東京の地価は世界の主要都市に比べて、なお割安で投資利回りが高いため、海外マネーの流入が続く。中国の不動産不況もあり、投資の流入はしばらく続くとの見方が多い。

今後の地価は日銀の金融政策に左右される面があり、金利の動向への注視が欠かせない。世界経済に不透明感が増せば、海外マネーが変調を来すこともあろう。地価上昇の持続力を見極めたい。

気がかりなのは、在宅勤務の定着により、東京都心のオフィス街で空室率が上昇していることだ。オフィスの大量供給も続いており、苦労するビルは少なくない。

都心ではマンション価格の高騰が続き、住宅地は周辺の千葉県などでも高い上昇率をみせるようになってきた。コロナの影響が弱まり、人口が東京に流入する傾向が再び強まっている。金利の動向にもよるが、住宅政策が課題になってくる可能性もある。