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岸田首相の所信表明演説の全文②

 経済政策・供給力強化
 
 
#政治 #政治
2023/10/24 2:00
 
衆院本会議で所信表明演説する岸田首相 (23日)
2 経済・経済・経済

「変化の流れをつかみ取る」ための「一丁目一番地」は経済です。日本経済は、30年ぶりの変革を果たすまたとないチャンスを迎えています。このチャンスをつかみ取るために、私は過去に例のないような大胆な取り組みに踏みこむ決意です。

この30年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきました。人への投資や賃金、さらには未来への設備投資・研究開発投資までもが、コストカットの対象とされ、この結果、消費と投資が停滞し、更なる悪循環を招く。低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」とも呼び得る状況でした。

しかしながら、30年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスが巡ってきました。コロナ禍での苦しかった3年間を乗り越え、経済状況は改善しつつあります。

30年ぶりの3.58%の賃上げ、過去最大規模の名目100兆円の設備投資、30年ぶりの株価水準、50兆円ものGDP国内総生産)ギャップの解消も進み、税収も増加しています。その一方で、国民負担率は所得増により低下する見込みです。

この前向きな動きが続けば、新たな経済ステージへの移行が現実のものとなります。物価上昇を乗り越える構造的な賃上げと脱炭素やデジタルなど攻めの投資の拡大によって消費と投資の力強い循環が本格的に回り始めます。

「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革です。「コストカット型経済」からの完全脱却に向けて、思い切った「供給力の強化」を、3年程度の「変革期間」を視野に入れて、集中的に講じていきます。

新しい経済ステージに向けた確かな息吹が生まれてはいるものの、国民の消費や投資動向は力強さに欠ける状況にあります。外生的な物価上昇が急激に生じたため、足元の賃上げが物価上昇に追い付いていません。

変革を加速する力強い後押しを早急に行わなければ、日本経済は3年程度の「変革期間」どころか、これまでの状況に後戻りしてしまうリスクを抱えています。

しかし、私は断じて後戻りは許さない。変革を力強く進める「供給力の強化」と不安定な足元を固め、物価高を乗り越える「国民への還元」。この2つを「車の両輪」として総合経済対策を取りまとめ、実行してまいります。

【供給力の強化】

今回の総合経済対策の第1のポイントは「供給力の強化」です。GDPギャップが解消に向かう中「供給力の強化」のための対策に軸足を移します。

半導体や脱炭素のように安全保障に関係する大型投資をはじめ、特に2年から3年以内に供給力強化に資する施策に支援措置を集中させ、「変革期間」の呼び水とします。

さらに、賃上げ税制を強化するための減税措置や、戦略物資について初期投資だけでなく投資全体の予見可能性を向上させる過去に例のない投資減税、特許などの所得に関する新たな減税制度、人手不足に苦しむ中堅・中小企業の省力化投資に対する補助制度をはじめ、抜本的な供給力強化のための措置を講じていきます。突発的なエネルギー価格の高騰に備え、省エネ・脱炭素投資の更なる拡大を図ります。

また、AI(人工知能)、自動運転、宇宙、中小企業の海外展開などの新しいフロンティアやイノベーションへの取り組み、スタートアップへの支援を強化します。

経済活動の基盤である金融資本市場の変革にも取り組みます。資産運用業とアセットオーナーシップの改革を進めるとともに、金融リテラシーの向上などに向けて関連法案の今国会での成立を目指します。

あわせて、三位一体の労働市場改革、企業の新陳代謝促進、物流革新など、生産性を引き上げる構造的な改革を進めます。成長と分配が持続的に回っていく、物価上昇を十分に超える持続的賃上げが行われる経済を目指していきます。

さらに、10月から先行して開始した「年収の壁・支援強化パッケージ」について、今後「106万円の壁」に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにするため、十分な予算上の対応を確保します。

【国民への還元】

経済対策の2つ目のポイントは「国民への還元」です。

急激な物価高に対して賃金上昇が十分に追いつかない現状を踏まえ、「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」として、まず、現世代の国民の努力によってもたらされた成長による税収の増収分の一部を公正かつ適正に「還元」し、物価高による国民のご負担を緩和いたします。

同時に、長年にわたって染みついていたデフレマインドからの転換を今こそ行動に移すよう関係者に強く呼びかけていきます。なお、還元措置の具体化に向けて、近く政府与党政策懇談会を開催し、与党の税制調査会における早急な検討を指示します。

その際、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々の不安に配慮し、寄り添った対応を図ることが極めて重要です。多くの自治体でこの夏以降低所得者世帯に対して1世帯当たり3万円を目安に支援を開始してきました。

この物価高対策のための重点支援地方交付金の枠組みを追加的に拡大することとし、経済対策に盛り込みます。

エネルギー価格の上昇については、9月には、年内の緊急措置として、リッター175円をガソリン価格の実質的な上限とするため補助を拡大しました。この措置を電気・ガス料金の激変緩和措置とあわせて来年春まで継続します。

また、地方自治体が地域の実情に応じてきめ細かく生活者や事業者を支援できるよう、先ほど申し上げた枠組み以外の重点支援地方交付金も追加します。

コロナ禍で国民負担率は高止まりしましたが、成長の成果もあって低下する見込みです。その低下を確かなものとし、岸田内閣として国民負担率をコロナ禍の水準に後戻りさせることなく、高齢化などによる上昇に歯止めを掛けます。

そのためにも所得の増加を先行させ、税負担や社会保障負担を抑制することに重きを置いて経済財政運営を行います。

【首相の所信表明演説全文】
①「変化の流れつかむ」
③デジタル・地方創生
④外交・安全保障
憲法改正皇位継承