バンブーズブログ

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歴史的な円安の対応策は?

[社説]米国発の円安への対応は中長期の視点で
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/2 19:00
 
市場では政府・日銀による円買い・ドル売り介入の観測が広がる(財務省㊧と日銀本店)
歴史的な円安が続くなか、政府・日銀による円買い・ドル売りの為替介入とみられる取引が相次ぎ、円相場が大きく変動している。円安・ドル高の根底には米国の利下げ観測の後退があり、日本側の対応には限界がある。

中長期の相場安定に向け、円安のメリットを最大限に生かす経済の将来像を描き、市場や国民と共有する取り組みを求めたい。

米連邦準備理事会(FRB)は1日の米連邦公開市場委員会FOMC)で、5%超の政策金利を6会合連続で据え置いた。

声明は「ここ数カ月、2%目標に向けた進展がみられない」とインフレ圧力の根強さを認めた。パウエル議長は記者会見で、利下げの環境が整うまで「どれくらい時間がかかるかはわからない」と語った。年内3回の利下げ見通しは後退するのが確実だ。

円相場は4月末、一時1990年4月以来となる1ドル=160円台に下落した。直後に急速に値を戻し、政府・日銀が介入に動いたとの観測が市場で広がった。今回のFOMC後にも円が大きく上げ、再介入との見方が出ている。

急激な相場変動は企業の事業計画に悪影響を及ぼす。介入は相場の無秩序な動きに対抗する手段として、場合によっては選択肢になる。だが円安の背景に米国のしつこい物価高がある以上、根本的な解決策にはならない。幅広い視野で対応を練る必要がある。

日銀が円安阻止のため利上げを急ぐのは、金利上昇の副作用が大きく、避けるべきだ。ただ市場との対話は工夫の余地がある。

4月の金融政策決定会合では、植田和男総裁が会見で円安が物価に与える影響を重視しない印象を与え、円売りが加速した。物価情勢や政策運営の説明がやや抽象的で、すれ違いの一因となった。

円安はグローバル企業の収益を押し上げる半面、物価を超える所得増の実現を遅らせ、個人消費の停滞が長引く懸念を伴う。影響を多面的に分析し、政策運営に理解を得ようとする努力が重要だ。

成長期待を高める経済構造の改革が欠かせないことも改めて指摘したい。日本企業が海外にためたお金を含め、国内外企業の投資を引きつければ、長い目でみて為替の安定につながる。

過度な円安が日本経済への復活の流れを止めないよう、短期の対応だけではなく、中長期の課題を整理し、着実に対策を打ちたい。