バンブーズブログ

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『ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗


 
 
#ライドシェア #経済 #政治
2023/12/20 15:58 (2023/12/20 21:45 更新)
 
都市部や観光地のタクシー不足の解消へライドシェアを限定解禁する
一般ドライバーが有償で顧客を送迎する「ライドシェア」が2024年4月に条件付きで利用できるようになる。タクシー会社が運行管理し、車両不足が深刻な地域や時間帯に絞って限定解禁する。政府はアプリ事業者らの新規参入を含む全面解禁の議論を続け、同年6月までに結論を出す。

岸田文雄首相が20日に開いたデジタル行財政改革会議で「全国各地で深刻となっている地域交通の課題を踏まえ、新たな運送サービスを24年4月から開始する」と表明した。

新たなサービスはタクシー配車アプリの対応車両が70%を超える都市部や観光地が対象となる見込みだ。運賃はタクシーと同じとし、需給に応じて料金が変動する「ダイナミックプライシング」は採用しない。

 
配車アプリのマッチング率などのデータを基に都市部や観光地などでタクシーが不足する地域や時間帯を割り出す。あらかじめ定める基準を超えた場合に運行を認める方向だ。

都市部は朝の通勤時間帯のほか、急な雨天や公共交通機関の停止時、大型イベントの開催時などに走るイメージを想定する。観光地では観光客が多いハイシーズンを見込む。

道路運送法により第2種運転免許を持たない人が有償で客を送迎することは原則できない。新たな制度は普通免許を持つ一般ドライバーが有償で乗客を運ぶ行為を限定的に認める。

安全確保のためタクシー会社がドライバーへの教育や車両整備の管理、事故時の責任を負う。タクシー専用車両を一定台数以上保有していれば、一般ドライバーの自家用車を活用できる。

新たな制度で運行できる地域や時間帯が限定される場合、担い手にとっては稼働時間を予想しにくいという課題が生じる。アプリを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を十分確保できるかが重要になる。

政府には働きたいドライバーがあらかじめ勤務できる日時をタクシー会社に伝え要請があれば乗務する仕組みとする案がある。「流し」の運行を認めるかどうかは検討課題だ。

法改正は24年6月までに結論

タクシー会社以外の参入は認めない。アプリ事業者がタクシー会社を買収する形なら参入できる。

政府は法改正が不要な範囲でまずライドシェアの運行実績をつくり、効果を検証する。アプリに不慣れな高齢者らへの配慮も必要になる。

法改正を含む全面解禁の是非は第2段階の議論となる。タクシー会社以外の参入を認めるかどうかや、地域や時間帯の制限を撤廃するかについて24年6月までに判断する。

近年は都市部のほか、インバウンド(訪日外国人)の急回復で混雑する観光地でタクシー不足が深刻になっている。

 
行列ができる朝のタクシー乗り場(2022年10月、東京駅前)
背景には運転手の減少がある。全国ハイヤー・タクシー連合会によると個人タクシーを除くドライバーの数は23年3月末時点でおよそ23万人で、新型コロナウイルス禍前の19年から2割減った。コロナ禍で離職者が増えた。

タクシー業界は以前からライドシェアの導入に反発してきた。運行管理や車両の整備などで安全性を担保できないと主張してきた。経営を圧迫されるとの懸念もあり、国内で導入に向けた議論が進んでこなかった。

今回の「ライドシェア」がタクシー不足の解消につながるかどうかは、タクシー会社が熱心に取り組むかどうかにかかる。利用者の「タクシーがつかまらない」という不満がなくならなければ全面解禁を求める声は高まる。

海外ではタクシー会社以外のアプリ事業者などが一般ドライバーを管理して運行する方法が普及している。米ウーバーテクノロジーズや米リフト、中国の滴滴出行(ディディ)、シンガポールのグラブなどが広く使われている。

海外は「ダイナミックプライシング」によって需要の多い時間にドライバーが運行すれば効率的に働ける仕組みになっている。運行主体とドライバーの関係が雇用契約ではなく業務委託のケースも多い。

過疎地向け、首長が判断可能

過疎地向けには別制度の要件を緩和して類似サービスを広げる。高齢者らが買い物の移動に困る交通弱者になることも防ぐ。ライドシェアとは別に、公共交通機関の乏しい地域などで例外的に認める「自家用有償旅客運送」制度を使いやすくする。

現在は兵庫県養父市京都府京丹後市などが導入し、地域住民が指定区域内を自家用車で運行する。

この制度を巡り運行区域や料金について事前に地元の交通事業者などと協議する義務を緩和する。反対が残り結論がまとまらない場合、自治体の首長が判断できる仕組みも設ける。

年内に実施主体からの受託で株式会社の参入を認める。現在はタクシーの半分程度としている運賃は8割程度に引き上げる。

現在は運行を非営利に限り、NPO法人などが担っている。区域や料金も事前に地元の交通事業者などと協議する義務があり、活用しにくいと指摘されていた。

政府は20日の会議でタクシー運転手になる際に課されている地理試験の廃止も決めた。カーナビの普及で試験は不要と判断した。タクシー会社にとっては2種免許を持つ正規の運転手を育成・確保しやすくなる。