バンブーズブログ

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「銀行国有化」は問題‼️

[社説]意図せざる「銀行国有化」は早期解消を
 
 
#社説 #オピニオン
2024/6/8 19:05
 
じもとHDは6月に「国有化」される(記者会見する川越浩司会長、2024年4月、山形市
山形県きらやか銀行を傘下に持つじもとホールディングス(HD)は6月下旬の株主総会で、議決権の63%を国が握る見通しだ。2024年3月期に無配に転落したため、国が公的資金の見返りとして保有する優先株に議決権が生じる。事実上の「国有化」は本来避けるべき異常な事態だ。

きらやか銀はリーマン危機や東日本大震災に際して公的資金に頼った。震災後に仙台銀行と統合し、じもとHDが発足したが、最近も業績悪化を受け23年9月に180億円の公的資金を注入された。その結果、じもとHDが抱える公的資金は現在780億円に及ぶ。

昨年時点ではじもとHDの24年3月期決算は黒字転換する計画だったが、きらやか銀の取引先の相次ぐ破産などで損失が膨らみ、200億円超の最終赤字になった。

国が公的資金の見返りに持つ優先株は通常なら議決権が無いが、無配のときに議決権が生じる。じもとHDが無配に陥る結果、国の議決権が63%に達する。

巨額の赤字を出すのは経営の失敗であり、公的資金を抱える企業ならその責任は一段と大きい。じもとHDときらやか銀の経営陣が引責辞任するのは当然だ。

金融庁が最後に公的資金を注入してから1年もたたない。にもかかわらずじもとHDの赤字がかさみ、公的資金の返済期限の延長も取り沙汰されている。公的資金を入れるときの見通しは甘くなかったのか、監督は十分だったのか。行政も責任は免れない。

企業や家計に資金を届ける銀行は経済の要であり、収益を競う民間企業が担うのが健全な姿だ。国が63%の議決権を握る状態は望ましくない。じもとHDは手立てを尽くして経営を立て直し、早期の復配で脱「国有化」してほしい。

銀行の実質国有化の例に03年のりそなHDがある。政府が預金保険法に基づき金融危機対応会議を開き、危機を防ぐ意志を示して議決権取得を決めた。

じもとHDは金融機能強化法に基づく対応で、明確な意図は示されず、無配転落でなし崩し的に「国有化」に至るように映る。関係者は説明責任を果たすべきだ。

金融機能強化法で公的資金を受けた地方銀行はなお数行残る。公的資金を支えに地域に潤沢な資金をもたらす意義はあるが、確実な返済が大前提だ。じもとHDの「国有化」を、各行が経営を締め直すきっかけにしてほしい。