バンブーズブログ

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『線状降水帯』に迅速な対応を

[社説]線状降水帯予測の活用進めよ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/6/8 19:00
 
鹿児島県では線状降水帯予測が出されたものの発生はしなかった。大粒の雨が降る枕崎市(5月28日)=共同
狭い範囲に集中豪雨をもたらす線状降水帯の発生を都道府県単位で予測する取り組みが始まった。気象庁は5月末、鹿児島など7県と奄美地方に発表した。記録的な雨になった地域は多いが、線状降水帯は発生しなかった。

緊急を要する判断で、外れたのはやむをえまい。精度の課題が浮き彫りになった形だが、命を守るために予測は重要な情報だ。自治体は災害への備えに生かし、住民も早めの避難行動などに結びつけるなど、活用を進めたい。

線状降水帯は積乱雲が列のように連なる現象だ。集中豪雨の約半分は線状降水帯によって生じ、梅雨の時期はほとんどの場合に当てはまる。2018年の西日本豪雨球磨川が氾濫した20年の熊本豪雨などの原因となった。

気象庁は22年、九州南部や東海など11地区に分け、線状降水帯の予測を始めた。新たなスーパーコンピューターの導入や技術の進歩で、都道府県単位に絞り込めるようになった。ただ的中率は4分の1ほどで、2回に1回くらいは予測を出せないまま発生する事態も起こりうる。

空振りが続けば、必要な緊張感を維持できない。専門家の意見を聞きつつ、精度と信頼性のさらなる向上に取り組むべきだ。気象庁は今回の予測と実際の雲や雨の発生状況を細かく検証する方針だ。

発展途上とはいえ、半日前に出る情報を使わない手はない。他の警報・予報や河川の水位などの情報と組み合わせれば、必要な対応を判断できる。とりわけ夜間の発生が予測される場合、迅速な対応が命を守るカギとなる。

予測の認知度向上も大きな課題となる。気象庁のアンケート調査によると、内容を理解している国民は半数に満たない。危険度を正しく捉えて安全確保に動くよう、国や自治体は住民への周知や訓練での定着に努めねばならない。

今年も日本周辺の海面水温は高い状態が続いており、大雨が起こりやすい条件にある。十分な備えと注意を心がけたい。