[社説]クールジャパンは検証が先だ
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2024/6/17 2:00
日本アニメは海外でも人気が高い(中国で開かれたスタジオジブリ展、2024年4月)
内閣府の知的財産戦略本部がクールジャパン(CJ)戦略の再起動をうたった提言をまとめた。コンテンツ、食、インバウンド(訪日外国人)観光を3本柱に挙げ、官民ファンドによる投資を拡大する方針を示している。
総花的で焦点がぼやけ、成果の測定が難しいという以前からの欠陥が広がらないか。いたずらに対象を広げる前に、これまでの成果を丁寧に点検をすべきだ。
CJ政策は当初から映画などコンテンツ産業の振興を前面に出しつつ、広く日本の魅力を育て海外に伝えることを目的に掲げた。そのため対象が食品や観光などに広がってきた。
2013年に設立した経済産業省所管の官民ファンド、海外需要開拓支援機構(通称CJ機構)は23年3月末時点で356億円の累積損失を抱える。財務省は統廃合を検討すると通告したが、今回の提言では「萎縮せず取り組むべきだ」としている。
投資対象は演芸ホール、テーマパーク、家具会社など幅広い。日本の製品や作品を集めた小売店や放送会社は失敗に終わったが、今後の方針では日本作品に特化したネット配信サービス育成を説く。まずこれまでの投資結果をきちんと総括、公表すべきだろう。
コンテンツ産業は成長分野であり日本にとって大事だ。しかし、リスクを取って投資するのは民間の役割であり、CJビジネスは基本的に民間に任せるべきである。再起動にあたっては官民の役割分担をきちんと見直したい。
海賊版対策や研究者のための作品収集と保存などは収益化が難しく、官の役割だろう。
アニメなどの業界で働きたい外国人からは、ビザの関係で仕事の種類が限定される、住居を借りにくい、といった指摘がある。映画やドラマのロケ撮影について、日本の場合、米国や韓国に比べて大がかりな撮影に官の規制が厳しすぎるという声も聞く。
こうした分野こそ政府の出番ではないか。