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南ア新政権は民主政の力示せ

[社説]南ア新政権は民主政の力示せ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/6/19 2:00
 
南ア議会で大統領に再選され、演説するラマポーザ氏(14日、ケープタウン)=ロイター
南アフリカの総選挙で、アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後30年にわたり単独政権を担った与党が初めて過半数を下回った。白人を主な支持基盤とする野党などと連立政権の樹立で合意した。融和を急ぎ、失業や経済格差といった問題に対処するよう期待する。

5月の総選挙で与党・アフリカ民族会議(ANC)の得票率は前回の6割から4割に低下した。第2党の民主同盟(DA)などと組むことで過半数を確保し、ANCのラマポーザ大統領が続投する。

同氏は「挙国一致内閣」を掲げたが、大衆迎合主義(ポピュリズム)の第3党や、反資本主義を掲げた第4党とは組まなかった。DAは親ビジネス路線をとり、市場は安堵している。ANCには白人に支持者が多いDAとの連立に拒否感もあるが、協力は不可欠だ。

ANCはアパルトヘイトと闘った故マンデラ元大統領が率いた名門政党だ。しかし経済の停滞や治安の悪化、汚職のまん延などで支持を失った。実質経済成長率は1%に届かず、失業率は3割を超える。有権者の不満を重く受け止め、改革を急がねばならない。

今回は、投票の力で政権に新陳代謝を迫る仕組みが南アで健在であることを示した。ラマポーザ氏は開票結果を受け、自国の民主主義が「強く、健全だ」と述べた。

アフリカ大陸では指導者が強権統治や改憲で居座る例や、クーデターが相次ぐ。新政権は南アが抱える問題に真摯に取り組み、民主主義が課題解決に力を発揮することを実証してほしい。

南アはロシアや中国などとBRICSを構成し、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の代表格だ。次の20カ国・地域(G20)議長国で、先進国と新興国の仲立ちを期待される存在になる。

ウクライナを侵略したロシアと合同軍事演習を実施するなど対ロ関係が良好だが、欧米と対立しているわけではない。日本にとって南アは企業進出先としてアフリカ最大であり、投資や貿易を通じ協力関係を深める必要がある。