バンブーズブログ

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[社説]資産運用業の競争促し経済の好循環を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/24 2:00
 
岸田首相は「資産運用特区」を創設し海外勢の参入を促すと表明した(21日、ニューヨーク)
岸田文雄首相がニューヨークで講演し、日本に「資産運用特区」を設けると表明した。家計や年金などからお金を預かり、国内外の株式や債券で運用するのが資産運用業だ。ここに海外勢の参入を促して競争を促す狙いがある。

日本は資産運用会社の多くが銀行や証券会社の子会社で、運用の人材難やノウハウ不足が長年いわれてきた。海外勢を呼び込んで活性化につなげる意味があろう。

金融や投資は国境を越えて行き来する。海外にいても日本に投資でき、優れた運用成績をあげるファンドマネジャーはいる。特区というからには人が集う利点を見いだせる改革にする必要がある。

シンガポールや香港などアジアの金融都市と比べ、日本は所得税法人税の税率の高さが壁だと指摘されてきた。資産運用で高度なスキルをもつ外国人を誘致するには、税制面や在留資格などで踏み込んだ優遇策がカギになろう。

新規参入の妨げになる規制や慣行は見直すべきだ。投資信託の日々の基準価格は資産運用会社と信託銀行で二重に計算している。バックオフィス業務を軽減できれば本業の運用に集中しやすい。

新たな資産運用会社の育成も欠かせない。岸田首相は「運用資金獲得支援プログラム」を提案した。資産運用のベンチャーを育てる目的で初期段階から資金を入れる仕組みであり、生かすべきだ。米国のように公的年金が資金の出し手に加わることも考えたい。

世界をみれば日本の資産運用会社の規模は小さい。大手はIT(情報技術)に巨額の資金を投じる競争になり、米ブラックロックは膨大なデータを使い、起きうる危機の影響など複雑なリスクの分析力を磨いている。世界に伍していける運用力強化は喫緊の課題だ。

年金基金なども高度化せねばならない。運用を任せる先がきちんと成績を出しているか、厳しく選別する姿勢が求められる。

岸田首相は資産運用立国を掲げる。肝心の国内での投資が報われなかったのがこれまでの30年だ。資産運用業の改革は手段に過ぎない。日本が国内外から投資される国になり、広く国民に富をもたらすのが狙いの中心であるべきだ。

資本が効率的に生かされ、企業が持続して価値を高める市場にしていかねばならない。産業の新陳代謝が進み、経済が活性化する好循環の先にこそ、人もマネーも集まる姿があるはずだ。