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既成政党への不信ぬぐう党首選に

[社説]既成政党への不信ぬぐう党首選に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/8/11 2:00
 
党首選に向け、動向が注目される自民党岸田文雄首相(総裁)㊨と立憲民主党泉健太代表
9月の自民党総裁選と立憲民主党代表選まで2カ月を切った。政治資金問題などで岸田文雄政権の支持率はどん底にある。だが取って代わる勢力は自民党にも野党にも見当たらない。政治に閉塞感が漂い、既成政党への不満が募るなかでの党首選である。

政治へのあきらめを、変わるかもしれないという期待に転化させる。党首選は本来、そうした政治のダイナミズムを秘めたものだ。既成政党への不信をぬぐい、議会制民主主義の支柱である政党を立て直す機会にしてほしい。

生まれ変わる姿みせよ

自民党立憲民主党の党首選はともに任期満了に伴うもので、いずれも3年ぶりとなる。前回は時期が衆院選を挟んで前後していたが、今回はほぼ重なる。第1党と第2党が同時期に党首選を行えば、双方の候補者の顔ぶれや政策論争の深みなどを比較しやすくなる。国民の目にわかりやすい、開かれた選挙戦を求めたい。

というのも、それだけ国民の既成政党への不信は深刻だからだ。主因が自民党の派閥のずさんな資金処理とその後の甘い対応にあるのは明らかだが、自民党批判の受け皿になり切れない立憲民主党のふがいなさも拍車をかける。

先の東京都知事選では既存の政治を批判する勢力がSNSの短いメッセージを駆使し、既成政党を脅かした。自民党立憲民主党が国政選挙で同じ轍(てつ)を踏まぬためには、党首選で生まれ変わった姿を見せるほかあるまい。

こうした現状を政治学者の宇野重規・東大教授は「政党の機能不全の表れだ」と指摘する。政治資金問題をめぐる自民党の党内統治が機能していないだけでなく、選挙でも政党がその役割を果たしていないという。

重点政策をあらかじめ示し、時間をかけて有権者に政策と候補者の人となりの浸透を図る。当たり前のことだが、それがおざなりだから短い動画に票をさらわれる。党の立て直しには党首選でこうした基本に立ち返るべきだ。

それには党首選に一定の時間をかけることが必要だ。立民代表選は9月7日告示、同23日投開票と決まった。選挙期間を規則上、最長の17日間としたのはよい。

自民総裁選の日程が決まるのは8月20日になるという。準備を考えれば遅すぎるのではないか。党内には若い世代を中心に選挙期間をできるだけ長くし、討論の機会を増やすべきだとの声がある。ぜひ実現してほしい。

第1党、第2党の党首選は首相候補を選ぶ場である。そこに立つ政治家は政策として何をやるのかはもちろん、誰とどう実行するかという政権の陣立ても示すくらいの準備があってしかるべきだ。

米大統領選では副大統領候補もあらかじめ提示する。党首選の段階でも右腕の官房長官などの候補を示してはどうか。首相になれば頭の中の7割は外交が占めるという。経済運営や社会保障など内政課題を誰に任せるかは政権の信頼度を判断する材料になる。

政権運営の観点からは与党との関係も重要だ。岸田政権のつまずきは旧統一教会問題の処理などをめぐって、自民党公明党との関係がギクシャクしたことも影響した。連立運営の要となる幹事長を誰に任せるのか。それぞれの候補の腹づもりを聞きたい。

政権の陣立ても示せ

政治主導が定着するなか、政権の陣容として、首相を間近で支える首相官邸のチームづくりもカギを握る。首相の側近たる政治家と官邸の運営に通じた官僚でチームを形成するには一定の経験やノウハウが必要だ。

首相をめざすなら、そうした人脈を日ごろから養っているのも資質の一つだが、チームづくりの知見は自民党内でも共有されていない。かつては派閥内で引き継がれたが、首相候補の養成機能が薄れるにつれ失われた。

今回は派閥の解消が唱えられて初めての総裁選である。派閥に代わる人材の育成・登用の仕組みをどうつくるのかは自民党にとって大きな課題だ。総裁選ではこうした人材の育て方についても議論を深めるべきだろう。

政権は長ければよいものではないが、米大統領選の行方をはじめ国際情勢が不透明感を増すなか、対外的には長期政権は国益だ。投資家にとっても政治の安定は安心材料になる。

数年先まで見通した政権運営を担うには、政策と陣立てを示すことで、首相として何をめざすのかが伝わらなければならない。国民の前で、しっかり準備した党首選をみせてほしい。