バンブーズブログ

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⭐️不誠実と受け取られかねない姿勢を謹んで取り組んで欲しい

[社説]新政権は難題から逃げず処方箋を
 
 
#社説 #オピニオン
2024/10/2 2:00
 
首相に指名され、一礼する自民党石破茂総裁。党内基盤の弱さをどう克服するかが政権運営を左右する(1日、衆院本会議)
自民党石破茂総裁が第102代首相に就任し、新内閣が発足した。9日に衆院を解散し、27日投開票の総選挙に臨む。激動する世界で経済再生を軌道に乗せ、国を守るかじ取りは難しさを増す。難題から逃げずに取り組み、国民の信任を得なければならない。

新たな党執行部と閣僚の顔ぶれからは挙党態勢の構築に苦心した形跡がうかがえる。首相は距離のある麻生太郎氏を党最高顧問に据えて政権に取り込んだが、総裁の座を争った高市早苗小林鷹之両氏はポストの打診を断った。

所得増の定着へ道筋を

長らく主流派の最大派閥として君臨した旧安倍派の閣僚はゼロだった。政治資金収支報告書の不記載があった議員が多く、起用すれば批判を招くおそれがあった。旧安倍派は不満を募らせ、安倍晋三元首相を「国賊」と呼んだと報じられて党処分を受けた村上誠一郎氏の入閣にも反発している。

安倍氏政権運営にかねて批判的だった首相はしばらく政権の中枢から遠ざかっていた。党内基盤の弱さをどう克服するかは政権の安定性に直結しよう。

最重要課題の経済再生は成長戦略の肉付けが待ったなしだ。マーケットは不安定な動きをみせている。首相は就任記者会見で、岸田政権の成長戦略や資産運用立国などの経済政策を引き継ぐと強調し、物価高対策として低所得者向けの給付金の検討も表明した。

人口減少で労働力が先細りするなか、生産性を高め、物価上昇を上回る所得の向上を定着させる道筋を早く示すべきだ。

持続可能で規律ある財政を取り戻すための議論は避けて通れない。少子化対策や防衛力の強化には安定財源の確保が必要だ。ムダな歳出を減らす努力を前提に、国民にある程度の負担を呼びかける努力を怠ってはならない。

外交・安全保障政策の中核は、強固な日米同盟を軸に中国とどう向き合うかにある。首相は対中抑止の強化を念頭に、アジア版の北大西洋条約機構NATO)創設や日米安全保障条約日米地位協定の改定を唱えている。

首相は安保政策へのこだわりが強く、アジア版NATOは長年の持論だ。政治家が理想を掲げるのは悪いことではない。いずれもハードルは高いが、うまく運べば、日米同盟の強化や世界の安定に寄与する可能性はある。

ただ、総裁選のさなかに米シンクタンクへの寄稿で安保条約の改定などを提唱したのは唐突だった。一議員としての発言と、首相になる人のそれは重みが違う。

アジア版NATOも安保条約や地位協定の改定も、国内論議はほとんどなされていない。米国の理解をどう得るのかは交渉を左右する。11月の米大統領選の結果も日米関係に影響を及ぼす。現実を見据え、優先順位をつけて丁寧に取り組まなければならない。

中国と安定的な関係を築くには抑止だけでなく対話が欠かせない。東南アジア諸国連合ASEAN)やアジア太平洋経済協力会議APEC)の首脳会議の場も活用し、対話を探ってほしい。

政策遂行の前提となるのは、派閥の政治資金問題で損なわれた国民からの信頼回復だ。問題の真相究明と再発防止はその第一歩である。収支報告書の不記載があった議員を次の衆院選でどう扱うのかは論点となる。

解散前の議論を十分に

曖昧な基準で公認すれば有権者の反発を招きかねない。かといって公認の見送りが相次げば党内の不満が高まる。手綱さばきを注視したい。

首相は衆院選を27日に実施する意向を表明した。発足まもない内閣は支持率が高い。国会で野党に追及されれば、下がる傾向がある。早期解散が自民党に有利に働き、自身の求心力の向上にもつながるとみたのだろう。

しかし、この日程では衆参両院の予算委員会を開き、内政、外交の幅広い課題について与野党が議論する時間はない。与党は党首討論の開催を提案したが、通例1時間に満たない党首討論で十分か疑問だ。少なくとも予算委で与野党がそれぞれの立場を明確にする機会をつくるべきである。

首相は総裁選で、衆院解散の前に予算委で議論するのが望ましいとの考えを示していた。早期解散論の小泉進次郎氏と一線を画していただけに、突然の方向転換は言行不一致のそしりを免れない。

首相は会見で「国民に納得し、共感してもらえる政治を進める」と言明した。不誠実と受け取られかねない姿勢は厳に慎み、政権運営に取り組んでほしい。