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⭐️積み残した重要課題も多い

[社説]経済再生の道半ばで退任する岸田首相
 
 
#社説 #オピニオン
2024/10/1 2:00
 
新総裁に石破茂氏が選ばれ、岸田首相は「新しい成長型の経済を目指し、国際社会を協調に導かなければならない」と述べた(9月27日、自民党本部)
岸田文雄首相が退任する。3年近くの経済運営を振り返ると、ほぼ30年続いたデフレからの脱却に道筋を付けたのは評価できる。一方で、新たな成長の軌道に乗せる経済再生の取り組みは道半ばに終わった。

後継の石破茂氏は10月1日の首相就任を前に、異例の形ながら、27日に衆院選を実施する意向を表明した。岸田政権の功罪も審判を受ける機会になろう。

岸田政権を顧みて、国際的に評価が高いのが外交・安全保障の分野である。中国や北朝鮮が軍事的圧力を強めるなか、防衛力の増強に踏みだした。ロシアのウクライナ侵略を受けた主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では米欧を結束させた。「状況対応型だが、着地はうまい」といわれる政治スタイルが生きた成果だろう。

経済運営は新型コロナウイルス禍からの出発だった。回復期の供給制約から物価高を招いたが、賃上げの加速で克服する流れをつくったことは評価したい。日銀総裁に経済学者の植田和男氏を起用し、金融正常化へのかじ取りを任せたのも適切な人選だった。

脱炭素の潮流やエネルギー価格の高騰を踏まえ、原子力発電所の活用に踏みだしたのも功績だ。脱炭素分野を成長産業にすべく、再生可能エネルギーの普及へグリーントランスフォーメーションにも着手した。貯蓄から投資への流れを太くし、一時は日経平均株価がバブル期を超え4万円台に乗せたのも業績に数えられよう。

もっともこれらは種まきに過ぎない。日本経済の長期の成長力を底上げできるかどうかは、次の政権が流れを止めず、着実に前に進めることにかかっている。

一方で残した課題も大きい。コロナ禍で膨らんだ予算規模は平時に戻らないままだ。防衛費や子育て支援では安定財源の確保を先送りしている。社会保障の持続性を高めるための給付と負担の見直しもちゅうちょした。

難題から目を背けがちなのは外交・安保分野も同じである。とりわけ中国に対しては、防衛力を強化する一方で、対話を深める努力がみえなかったのは残念だ。

現代は首相にとってやりたいことより、やるべき課題が山積している時代だ。岸田政権はやるべき課題を一定程度こなしたといえるが、積み残した重要課題も多い。功罪をどうみるか、国民の審判とともに歴史の評価を待ちたい。