バンブーズブログ

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《台湾有事》米軍、フィリピン北部に巡回拠点

 台湾有事に備え
 
 
#東南アジア #中国・台湾 #北米
2023/4/3 22:30 (2023/4/4 7:38 更新)
オースティン米国防長官(写真㊧)がフィリピンを訪問した際、巡回駐留拠点を4カ所増やすことで合意した(2月2日、マニラ)
【マニラ=志賀優一、ワシントン=中村亮】フィリピン大統領府は3日、米軍に巡回駐留を新たに認める4カ所の拠点を公表した。台湾に近い北部や南シナ海に面する西部の拠点を選んだ。米軍は作戦拠点を増やし、中国との有事にすばやく対応する態勢を強化する。

国防総省のシン副報道官は3日の記者会見で拠点4カ所をめぐり「米軍とフィリピン軍が自然災害や人道災害を含む幅広い共通の課題にこれまで以上に切れ目なく対応できるようになる」と言及。インド太平洋地域での即応力強化につながるとの見方を示した。

4カ所にはフィリピンのルソン島北部カガヤン州の2カ所を選び、そのうち1カ所は初めて海軍拠点を指定した。米国とフィリピンは2014年、防衛協力強化協定(EDCA)を結んで米軍がフィリピンで巡回駐留できるようにしたが、海軍の拠点はこれまで選んでいなかった。

ルソン島北端から台湾最南端の距離は約350キロメートルと近い。米軍は台湾周辺で中国軍に対する即応力を向上させる狙いがある。

西部ではパラワン州の1カ所を選定した。パラワン州の西方に位置する南沙(英語名スプラトリー)諸島で2月に中国船がフィリピン船にレーザー照射する事案が起きた。フィリピンが中国の海洋進出を最も懸念する海域の一つにあたる。新たな拠点で米軍の関与が増せば中国への抑止を強められる。

米国とフィリピン両政府は2月、巡回拠点を4カ所増やすと合意し、フィリピン政府が自治体と協議を重ねてきた。フィリピン大統領府によると、反発していた自治体はマルコス大統領が重要性を説明して説得したという。14年に合意済みの5カ所と合わせ、米軍の拠点は計9カ所に増える。

米軍は西太平洋に部隊を分散し、中国軍に攻撃の標的を絞らせない戦略を推進している。離島が多いフィリピンは米軍の分散戦略に適しており、バイデン政権が21年秋から拠点拡大を目指して交渉してきた。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は3月末、上院軍事委員会の公聴会でフィリピンの拠点に関し「米軍が前方展開して西太平洋や他の地域で中国との軍事紛争を抑止する」と断言した。

米軍は弾薬や燃料を拠点に備蓄し、有事対応に役立てる計画だ。戦闘が始まると船舶や航空機による物資の輸送が難しくなる。有事が起きる前に物資を前線拠点にあらかじめ備蓄しないと、作戦を継続できないリスクが増す。

拠点拡大で米軍とフィリピン軍は共同訓練の頻度を増やす効果も期待できる。フィリピン軍は国内の過激派対策に加え、中国の海洋進出への対応にも力を入れようとしている。米軍による訓練充実はフィリピン軍の能力向上に直結する。

焦点は台湾有事が起きた場合、フィリピン政府が米軍の拠点利用を認めるかどうかだ。

マルコス氏は2月、基地利用に関し「EDCAは戦闘の勃発という事態を含んでいない」との原則を示した。ただ実際に紛争が始まった場合には「フィリピンにとって何が良いのかを見極める必要がある」と語り、含みを持たせた。

ミリー氏は公聴会で、フィリピンを挙げ「必要なときにそこにいるだろう」と語り、台湾有事でも何らかの協力が得られるとの見方を示していた。