バンブーズブログ

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社説]会社を官僚の私物にするな   《行政の私物化》


 
 
#社説
2023/4/10 19:00
羽田空港で空港施設が保有する大型格納庫(会社提供)
国土交通省元次官の本田勝氏が昨年末に空港施設という企業に出向き、今年6月の株主総会後に同省出身の副社長を社長に昇格させるよう求めていたことが明らかになった。同社は東証プライム市場の上場企業であり、役所の権限を笠に着た介入に正当性は1ミリもない。傲慢かつ時代錯誤的な官僚OBの認識と言動にあきれる。

まず指摘したいのは、企業統治についての決定的な無理解だ。社長人事をはじめ重要人事を決めるのは取締役会であり、その取締役を選ぶのは株主総会だ。

安倍政権以来の企業統治改革で取締役会の独立性が重視されたのも、しがらみのない立場で公正な人事を実施することが企業の持続的な成長に不可欠だからだ。

そんな流れに無知なのか、本田氏側の要求は世間の常識とかけ離れている。本田氏が現在会長を務める東京メトロは上場に向けて準備中だが、はたして大丈夫か。ちなみに空港施設の大株主はANAホールディングス日本航空で、政府は1株も持っていない。

1970年設立の同社は、7代続けて旧運輸省国交省のOBが社長ポストを独占してきた。

2年前に民間出身の乗田俊明現社長が就任したのは、同社の社外取締役らでつくる指名委員会が前任の社長について、不良資産の処理の遅れや社内のコミュニケーションの姿勢について問題点を指摘したのが一因だったとされる。発足から日が浅く、不採算ホテルの売却など改革に着手したばかりの現体制を刷新しなければならない理由があるならぜひ知りたい。

同社は羽田空港などで貨物施設などを運営するが、その底地は国有地で、政府から1年契約で借りている。「土地を貸す見返りにポストをよこせ」と言うのなら、行政の私物化にほかならない。羽田空港の土地は国民の資産であり、一部の官僚の私有物ではない。

こんな非常識が横行するようなら、現役だけでなくOBによる天下りのあっせんなどにももう一段の規制が必要ではないか。