バンブーズブログ

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[社説]カジノの懸念払拭するIRに


 
 
#社説
2023/4/15 19:00
IRを建設する人工島の夢洲。カジノは敷地面積の3%にとどめる(大阪市
大阪府大阪市が進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の計画を政府が認定した。カジノにはさまざまな課題や懸念があり、まず1カ所から始めるのは妥当な判断だ。観光立国に資する施設のモデルになるよう課題の克服と懸念の払拭に努めてほしい。

IRの建設地は大阪湾を埋め立てた人工島の夢洲(ゆめしま)だ。ここで2025年国際博覧会(大阪・関西万博)を開き、29年秋以降にIRを開設する。これまでにない規模の会議場などを備え、MICEとよばれる国際会議や展示会の誘致が期待できよう。

事業期間は35年間。来場者は年2千万人で7割が国内、売り上げは年5200億円で8割をカジノで見込んでいる。審査では来場者数の根拠が不明確で下振れの可能性が指摘された。カジノ需要は新型コロナウイルス禍で落ち込み、回復途上にある。事業環境の動向を慎重に見極めることが必要だ。

カジノはギャンブル依存症に根強い懸念がある。政府のカジノ管理委員会は、入場料6千円を徴収し、回数制限やマイナンバーカードでの本人確認を行うとした。家族などが申し出れば利用を制限することもでき、一定の歯止めになろう。自治体が担う予防策の具体化も急ぐべきだ。

マネーロンダリングへの対応も重要だ。政府はカジノを犯罪収益移転防止法の対象にし資金移動を監視するほか、100万円超の現金取引の届け出を義務付け、チップの譲渡や持ち出しも規制する。暴力団員の排除も定めた。厳格な運用を求めたい。

カジノをめぐっては、現職国会議員がIR関係者から賄賂を受け取った収賄などの罪で一審で有罪になった。利権が絡む巨大事業は選定過程などの透明性が欠かせず、疑惑を持たれるようなことがあってはならない。

同時期に申請した長崎は認定の可否を見送り、継続審査とした。政府はIRを当面3カ所までとしているが、大阪の状況をみて慎重に判断すべきだ。