#中南米
2023/4/22 6:42
南米チリのボリッチ大統領は格差是正や環境配慮を訴えてきた=ロイター
【メキシコシティ=清水孝輔】南米チリのボリッチ大統領は21日までに、国内のリチウム産業を国有化すると表明した。チリのリチウム生産量は世界2位で、シェアは25%にのぼる。リチウムは電気自動車(EV)向け電池の製造に不可欠で、メキシコも2022年に国有化した。資源保有国の保護主義がEV供給網のリスクになってきた。
チリ政府はリチウム生産を担う国有企業を設立する。23年後半に国有企業を設立するための法案を議会に提出する。今後は国有企業がリチウム生産を主導するが、ボリッチ氏は民間企業の投資も部分的に認める方針を示した。国有企業と民間企業が合弁会社を設立する場合、国有企業が過半出資する見込みだ。
ロイター通信によると、チリのSQM社は30年、米アルベマールは43年までチリでのリチウム生産が認められている。ボリッチ氏は「チリ政府は既存の契約を尊重する」と説明している。両社は契約が切れるまでは従来通りリチウム生産を続けられる見通しだ。
左派のボリッチ氏は21年の大統領選で格差是正や環境保護を重点政策として掲げて当選した。選挙戦では鉱山会社に増税し、社会保障を強化すると主張してきた。世界でEV普及の動きが広がるなか、ボリッチ政権はリチウムの国有化で経済的な利益を囲い込みたい考えだ。