バンブーズブログ

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金高騰の世界経済の危険

[社説]金高騰が映す世界経済リスク
 
 
#社説 #オピニオン
2024/4/27 19:00
 
金の国際価格は初めて1トロイオンス2400ドル台に乗せた(東京都中央区の「GINZA TANAKA銀座本店」)
金(ゴールド)価格が上昇している。地政学的な不安やインフレといった要因が複合的に重なり、金の保有を増やそうという需要が高まっている。世界経済のリスクを敏感に映しつつある金価格の動向を注視しておくべきだ。

金価格の上昇は3月以降、一段と加速し、国際指標となるニューヨーク先物で4月中旬に史上初めて1トロイオンス2400ドル台に乗せた。直近1週間は上昇が一服したものの、昨年末に比べて1割強高い高値圏での取引が続いている。

金価格を押し上げた直接的な要因は地政学的な緊張の高まりだ。イランとイスラエルの対立激化が一段高を呼んだ。株式市場が不安定になっており、金に資金を逃避する動きになっている。

インフレへの懸念も金買いを後押ししている。米国など各国で物価上昇率がなかなか下がらない。インフレが長引く可能性があるなら、実物資産の一つとして金を選んでおく判断につながる。

各国の中央銀行基軸通貨ドルの代わりに金の保有を増やす動きも見逃せない。ウクライナ侵略の制裁としてロシアのドル資産が凍結されて以降、新興国を中心に外貨準備を分散し、自国で金を保有する動きが構造的に起きている。

中国人民銀行の外貨準備の内訳では3月の金保有が17カ月連続で増えた。一方で中国の米国債保有は減少傾向にある。金高騰はその裏で進むドル離れを示す。

米国など主要国の債務膨張や財政悪化を金買いの理由に加える声が出てきたのは気がかりだ。長期的な財政の持続性や紙幣の減価に対する懸念が含まれる。

金は本来、金利がつかず保有していて自ら価値を生み出すものではない。1990年代のように価格が長く低迷した時代もある。

ただその前に金高騰が起きた70年代を振り返れば、通貨制度を含めて国際的な枠組みが揺らいだ時期と重なる。分断が深まり、危機が広がる今の世界経済の不安を映す指標の一つとして金価格の動きに留意しておくべきだろう。