バンブーズブログ

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社説]日野自・ふそうは次世代技術で先手を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/1 2:00
 
日野自動車三菱ふそうトラック・バス経営統合することで基本合意した。水素燃料など互いが磨いてきた次世代技術を融合させ、カーボンニュートラルの実現といった社会課題の解決で先手を打ってもらいたい。

日野自といえば2022年に発覚した検査不正が記憶に新しい。国内のトラック出荷を全面的に停止する異例の事態に追い込まれた。三菱ふそうも、三菱自動車時代も含めて2度のリコール(回収・無償修理)隠しが大問題となったことがある。

両社とも過去に社会の信頼を裏切った経験を持つ。特に経営再建中の日野自は襟を正した上で、統合を再起のきっかけとしたいところだ。ただ、両社には反省だけでなく将来を見据えた取り組みに期待したい。

両社は統合を決めた大きな理由として次世代技術の実用化という課題を挙げた。カーボンニュートラルだけでなく自動運転などの「CASE」も、1社だけでは実現が困難だろう。

日野自の親会社であるトヨタ自動車の佐藤恒治社長も「CASE時代を生き抜くには日本の商用車事業は世界と比べて規模が小さく単独で戦うことは難しい」と話した。まずは統合新会社で知見を共有することが求められる。

トラックに強く求められるのが環境技術の普及促進だ。世界の自動車による二酸化炭素(CO2)排出量のうち4割をトラックなど商用車が占める。

乗用車では中国や欧米で電気自動車(EV)の普及が進む。一方で、車両が重く大きなパワーが必要な中大型トラックでは水素燃料の利用も現実的な選択肢となる。

三菱ふそうの親会社である独ダイムラートラックも水素を燃料に使う燃料電池の開発で先行している。トヨタも含め両グループを挙げて知見を融合させ、早期に社会に実装させる必要がある。商用車で台頭が著しい中国勢に対抗する意義も大きい。

日本の商用車メーカーはかつて、日野自と三菱ふそういすゞ自動車UDトラックスを加えた4社が存在した。すでにUDはいすゞ傘下に入っており、今回の統合で2陣営に集約される。

国内市場の伸び悩みを考えればようやく再編が進んだ感が否めない。両陣営には健全な競争を通じ、次世代技術で商用車業界の停滞を打ち破るよう期待したい。