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[社説]中国は衝突回避へ米と国防対話に応じよ


 
#社説 #オピニオン
2023/6/6 2:00
中国の李尚福国防相㊧はオースティン米国防長官と会話を交わしたが、会談には応じなかった=AP
シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、米国が呼びかけていた中国との国防相会談は見送りとなった。中国の李尚福国防相はオースティン米国防長官と現地で握手し言葉を交わしたものの、正式な会談には応じなかった。

中国は米国が2018年から李氏に科している制裁の解除を会談の条件に求めていた。世界の平和と安定に責任を負う2大国の安全保障を巡る意思疎通が滞ったままでは、意図しない衝突のリスクが高まるばかりだ。中国はあらゆるレベルでの会談に前提条件なしに応じるべきである。

中国軍は南シナ海台湾海峡で挑発行為を繰り返している。米インド太平洋軍によると、3日には台湾海峡を航行していた米海軍のミサイル駆逐艦に中国艦船が約140メートルの距離まで近づいて前を横切る事案があった。

米側が「公海での安全な航行規則に違反する」と批判したのはもっともだ。中国はこうした危険極まりない行為を慎むべきだ。

米中間では先に中国外交トップの王毅氏がサリバン米大統領補佐官とウィーンで意見交換した。経済閣僚では、中国の王文濤商務相が訪米時にレモンド米商務長官と会っている。

ただ、持ち越しとなっているブリンケン米国務長官の訪中はなお実現していない。軍当局間の意思疎通と同時に、公式の外交パイプを機能させることも課題になる。

一方、日中の防衛・国防担当閣僚が久々に対面で会ったのは、偶発的な衝突を防ぐうえで前進だ。両国間では海空連絡メカニズムが開通し、ホットラインでの閣僚間の通話も実現している。今後もこうした意思疎通は欠かせない。

対話だけでなく中国への抑止力を高める努力も重要だ。シンガポールでは日米とオーストラリア、フィリピンが4カ国の防衛相会談を初めて開いた。フィリピンは南シナ海と台湾の両方に近い。新たな多国間の枠組みを通じた抑止力の向上に期待する。

インド太平洋地域には米英豪による「オーカス」など多様な安保協力がある。中国の脅威に対処するにはこうしたネットワークを重層的に広げるのが効果的だ。

アジア安保会議にはロシアの侵攻を受けるウクライナからレズニコフ国防相が対面で参加した。国際会議の場で直接、自国への支持を訴えかけるのは国際世論形成のうえで意義がある。