#社説
2023/4/18 19:00
オースティン米国防長官は機密流出を受けて対策に乗り出した=ロイター
米政府の機密文書がインターネットに流出し、米連邦捜査局(FBI)は漏洩に関与した疑いがあるとして21歳の空軍州兵の男性を起訴した。ウクライナ情勢を含む重要な軍事情報が含まれ、同盟国などにも影響は計り知れない。米政府は直ちに改善策を講じ、再発防止に努めてもらいたい。
容疑者は情報部門に所属する技術者で、連邦軍の高度な機密情報へのアクセス権を持っていた。勤務で得た情報や文書を昨年からSNS(交流サイト)で共有し、そこから拡散していった。
こうした事態を踏まえ、米国防総省は機密を閲覧できる対象者の範囲を絞り込む措置をとった。バイデン米大統領は米軍や情報機関に機密情報の共有を制限するよう指示した。
機密を扱う職員の適性評価やSNSの利用を含む身辺チェックの強化は不可欠だ。従来の情報管理体制のどこに問題があるのか、検証を急ぐべきだ。
とりわけ深刻なのはウクライナを巡る機密漏洩だ。ウクライナの防空システムの弾薬が不足し、5月に機能不全に陥る見通しを記す資料が含まれる。米メディアによると、ウクライナが作戦計画の変更を迫られたケースもあった。
米国がロシアにいる協力者から入手したとみられる資料もある。今後の情報収集活動に支障を来すだけでなく、情報提供者に被害が及ぶ展開を懸念する。
流出した文書に、韓国によるウクライナへの砲弾支援に関する韓国政府高官の発言記録があったのは見過ごせない。米国が傍受して入手した可能性があるとされる。
オバマ政権下でドイツのメルケル前首相の携帯電話を盗聴した疑惑が浮上し、米独関係が緊張したことがある。現下の国際情勢でこのような情報が漏れれば同盟国からの不信を招き、西側諸国の結束に亀裂が生じかねない。
対ロシアでも対中国でも米国は要の存在である。米政府は関係国に状況を丁寧に説明し、懸念の払拭に全力を尽くすべきだ。