バンブーズブログ

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[社説]株主総会は企業価値高める対話の起点だ


 
 
#株主総会 #社説
2023/6/30 2:00
トヨタ株主総会(14日午前、愛知県豊田市)では気候変動に関する株主提案が出された
3月期決算企業の大半が29日までに定時株主総会を開催した。日本の企業や株式市場への再評価が進むなか、企業価値向上についての議論が交わされた。これを起点として、企業は株主との対話を深めていってほしい。

今年の株主総会の特徴は、株主提案の多さだ。三菱UFJ信託銀行の調べ(6月9日時点)では、6月総会で株主提案を受けた企業は90社と過去最高だった前年の77社を上回った。

東京証券取引所が企業に株式市場への意識を高めるよう求めていることもあり、物言う株主(アクティビスト)が企業統治や利益還元などに関する提案を積極的に出した。非政府組織(NGO)などが、大手銀行や商社、電力会社に脱炭素の取り組みを強めるよう求める提案も、ここ数年の間に定着してきた観がある。

企業統治や環境などに関する株主提案は、ほぼすべて否決された。しかし20%程度の賛成率を得たものもあり、アクティビストやNGO以外の一般株主に支持が広がっていることは明らかだ。企業はこの結果を市場の声として受けとめ、総会の後も丁寧な説明責任を果たしてほしい。

株主提案のかたちをとらず、株主が議決権行使を通じて取締役の選任に反対し、意思表示する例も目立つようになった。

トヨタ自動車豊田章男会長の取締役選任の賛成率が、全取締役の中で最も低い約85%にとどまったのは象徴的だ。海外投資家を中心に、取締役会の独立性への懸念を会長選任への反対で伝えようとした結果だろう。

多くの機関投資家はあらかじめ議決権行使の方針を示すようになった。これにより、投票行動の透明度が増した。

例えば日興アセットマネジメントは過去3期連続で自己資本利益率ROE)8%未満などの場合、「原則として取締役の再任議案に反対する」と明記した。ノルウェーの政府年金が議決権行使の方針を通じて女性役員の登用を強く促したのは、企業の多様性を高める観点で歓迎できる。

株式の持ち合いが減り、こうした投資家の声が総会で経営に伝わりやすくなったのは、健全な状態である。総会後も企業と株主の対話は続く。経営陣は緊張感を持ち、投資や還元の戦略を語るべきだ。株主も長期の視点で丁寧に企業を評価してほしい。