バンブーズブログ

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社説]株式市場を去る東芝の教訓


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/22 2:00
 
非公開企業になる東芝企業統治などの面で教訓を残した=ロイター
国内投資ファンド日本産業パートナーズ(JIP)などによる東芝へのTOB(株式公開買い付け)が成立した。1949年から上場している東芝の株式は、年内にも上場廃止となる。物言う株主(アクティビスト)の圧力から解放される東芝の経営陣は、再建に力を尽くしてほしい。

東芝の混乱の始まりは2015年に判明した不正会計だ。16年には米原発子会社で損失が発覚し経営危機に陥った。上場廃止を避けるために増資をしたが、株式を割り当てたアクティビストとは経営の路線に食い違いも見られた。

長期の視点で再建に専念できず、フラッシュメモリーなど優良事業の売却を余儀なくされたことで収益力の低下を招いた。

8年に及ぶ東芝の混乱は株式市場に重要な教訓を残す。

第一に、企業統治コーポレートガバナンス)の重要性だ。

不正会計が発覚する前の東芝は、ガバナンスが優れた日本企業の一社と見られてきた。確かに委員会などの形式は整っていたが、上意下達の官僚的な企業文化が強く、米子会社を含め、経営を厳しく監視できなかった。

第二に、株式市場と真摯に向き合うことの大切さだ。

不正会計が発覚した直後の説明は、明瞭さを欠いた。長期の視点で経営を支援する機関投資家との意思疎通も足りなかったようだ。20年の株主総会では、東芝経済産業省が一体となり一部株主に圧力をかけたとされた。市場を愚弄する行為にほかならない。

こうした東芝の教訓を、企業や投資家は重く受けとめるべきだ。ガバナンスをはじめとする市場改革の力強い継続が求められる。

東芝には量子暗号など有望な事業がまだ残る。新しい株主は、非上場となる東芝の再建を監視する責務がある。経営陣や社員と再生の青写真を共有し、広くステークホルダー(利害関係者)への説明責任を果たしてほしい。何よりも経営を覆ってきた閉塞感を変えなければならない。