バンブーズブログ

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[社説]なし崩しのミャンマー軍政容認は避けよ


 
 
#ミャンマークーデター #社説
2023/8/4 19:00
 
ミャンマー国軍には拘束中のスーチー氏を政治利用したい思惑が透ける(2018年10月、来日した同氏)=ロイター
ミャンマー国軍が拘束中の政治指導者アウンサンスーチー氏に恩赦を与え、減刑すると表明した。影響力が絶大な同氏の処遇改善で市民の抵抗を和らげ、国際的な圧力も懐柔したい狙いが透ける。

2021年2月のクーデター以降、市民弾圧を続ける国軍に民主派が武装抵抗し、情勢は混迷を極める。今回の措置が対話の糸口となれば望ましいことだが、調停役の東南アジア諸国連合ASEAN)がなし崩しに軍事政権の容認に傾く事態は避けるべきだ。

スーチー氏は政変時に捕らえられ、汚職罪などで計33年の禁錮・懲役刑を科された。1日に実施した恩赦で刑期は27年へ減じた。

軍政下の裁判は公正さを欠き、78歳のスーチー氏には短縮後の刑期もなお終身刑に等しい。それでも国軍は譲歩姿勢と同時に、同氏を政治利用する構えをみせる。

7月にはミャンマーを訪れた隣国タイのドーン外相との面会を許した。政変後、外国要人との対面は初めてだ。身柄を刑務所から政府施設に移したとの情報もある。

背景に国軍の焦りが映る。スーチー氏の国民民主連盟(NLD)が圧勝した20年の総選挙を無効にし、再選挙の実施で直系政党を勝たせて支配の正当化をもくろむ。だが民主派の抵抗から7月末が期限だった非常事態宣言を再延長し、選挙も先送りを迫られた。

気がかりなのはASEAN内の分断だ。タイはスーチー氏との面会の事実を直後の外相会議の場で初めて明かし、面目をつぶされた議長国のインドネシアが不快感をあらわにする場面があった。

タイは軍政を招き、中国やインドも巻き込んだ有志国会合を重ねてきた。加盟国の足並みが乱れれば、圧力が弱まり、強権支配の既成事実化に手を貸しかねない。

ASEANは「暴力の即時停止」など政変直後に決めた5項目の混乱収拾策の履行を国軍に求め、それまで主要会議から締め出す方針を変えていない。9月の次の首脳会議で基本原則を再確認し、事態打開の努力を続けてほしい。