バンブーズブログ

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[社説]選挙の信頼損ねた責任は重い


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/3 2:00
 
トランプ前大統領は支持者を扇動し、議会占拠事件を引き起こした疑いをもたれている(2021年1月6日の集会)=ロイター
2020年の米大統領選で敗北した結果を覆そうとした疑いで、トランプ前大統領が米連邦大陪審に起訴された。起訴状によると、トランプ氏は選挙結果の確定手続きを妨害する目的で支持者を扇動し、21年の連邦議会占拠事件を引き起こした。

不倫相手への口止め料支払いと私邸への機密文書持ち出しに続き、トランプ氏の起訴は3回目だ。今回は米国の民主主義を揺るがし、その基盤となる選挙への信頼を傷つけるとりわけ重大な事案である。その責任は厳しく問われるべきだ。

起訴状は議会の手続きを妨害した罪など4つの罪状をあげた。それによると、トランプ氏は選挙結果を覆し、権力の座にとどまろうと弁護士ら6人と共謀。「大統領選で不正があった」と虚偽の主張を繰り返し、支持者をあおった。

その結果が21年1月6日の連邦議会占拠事件だ。民主党候補だったバイデン氏を次期大統領に選ぶ手続きが進んでいた議事堂で、支持者と警官隊が衝突し、5人が死亡する惨事となった。

問題の根本は、トランプ氏が根拠なく「不正選挙」を訴え続けてきたことにある。私たちは、トランプ氏にこうした主張をやめるよう求めてきた。

いたずらに党派対立を深め、国内の分断を固定化するからというだけではない。選挙は民主主義の根幹をなす。まして米国は民主主義陣営のリーダーである。その信頼を自ら傷つけるような訴えは、民主主義への対抗心を隠さない中国やロシアを利するだけだ。決して容認できない。

トランプ氏は声明で、今回の起訴はバイデン政権による「選挙妨害だ」と反論した。同氏は24年大統領選に向けた野党・共和党の候補選びで、世論調査の支持率で首位に立つ。

口止め料などを巡る公判は来年3月から相次いで始まる。世界最強国の権力者を選ぶ選挙と裁判が同時並行で進む異例の事態も想定しなければならないだろう。