バンブーズブログ

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[社説]ASEANは合同演習を結束に生かせ


 
 
# ASEAN #社説
2023/9/27 2:00
 
合同演習の開幕式でASEAN議長国のインドネシアは「団結の機会になる」と強調した(19日、インドネシア・バタム)=共同
東南アジア諸国連合ASEAN)の各国軍が南シナ海で初めてとなる合同演習を実施した。軍事化を加速して強引に海洋進出を図る中国を念頭に、地域共同体として結束を示した意義は大きい。

ミャンマー危機への対応などを巡り、ASEANは加盟国の足並みの乱れが目立っていた。安全保障での連携強化で、地域安定の要として役割を果たしてほしい。

23日まで5日間実施した「ASEAN連帯演習」には、新規加盟が内定している東ティモールを含む11カ国が参加した。近年は中国や米国、ロシア、インドとそれぞれ演習を行ってきたが、加盟国だけでの実施は前例がなかった。

合同演習は今年の議長国であるインドネシアが主導した。開幕式で同国のユド国軍司令官は「団結の機会になる」と強調した。

南シナ海ではフィリピンとベトナム、マレーシア、ブルネイが中国と領有権を争う。インドネシアナトゥナ諸島周辺の排他的経済水域EEZ)で資源を巡る対立を抱える。

独自の境界線「九段線」を示し、ほぼ全海域を主権下だと主張する中国は、一方的に埋め立てや軍事施設の建設を進める。2016年に国際的な仲裁裁判所が「主張に法的な根拠はない」と断じたものの、判決に従おうとしない。

最近もフィリピン軍艦船の航行をレーザー照射や放水銃で妨害するなど、危険な挑発を繰り返す。8月下旬には海域の大半を自国領と示す「標準地図」を公開し、直後の首脳会議ではASEANの大半が国際法の順守を訴えた。

今回の演習は九段線に近い北ナトゥナ海で行う予定だったが、最終的に少し外れた南ナトゥナ海へ変更した。内容も海上巡視や捜索救助が中心で軍事色を薄めた。

中国を過度に刺激するのを避けたとみられるが、カンボジアなど親中派と目される国も集結したのは、大きな成果といえよう。

ASEANは経済、政治・安保、社会・文化の3つの共同体づくりを掲げる。経済統合が先行してきたが、米中対立下で、遅れ気味だった政治・安保の分野も団結の重要性が増している。初の合同演習をその推進力としてほしい。

日本は9月の首脳会議で、ASEANとの外交関係を最上位の「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすると確認した。安保支援でも日本への期待は高まっており、協力を深めていきたい。