バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]日ASEANは次の50年も共栄を目指せ


 
 
# ASEAN #東南アジア #社説
2023/8/10 2:00
 
高成長を続けるASEANは日本にとってますます重要になる(7月、ジャカルタで議長国インドネシアのジョコ大統領㊨と会談した林外相)=ロイター
日本と東南アジア諸国連合ASEAN)の友好協力が始まって今年で50周年となる。12月には東京で特別首脳会議も予定する。人口が6億7千万人を超え、世界の成長センターとなった同地域との関係は、日本にとって経済や安全保障で非常に重要な意味を持つ。次の50年も共栄を目指したい。

ASEANは1967年にタイやインドネシアなど5カ国で創設し、現在は10カ国が加盟する。日本が対話を始めたのは73年だ。当時、日本は天然ゴムの生産地である同地域に安価な合成ゴムの輸出を増やし、反発を招いていた。

協議の結果、日本は地域の天然ゴム産業の不利益を避ける配慮を約束した。ASEANは成功体験を得て、その後の対外交渉に結束して臨むきっかけとなった。

摩擦から始まった経済協力は、貿易から投資へと広がった。85年のプラザ合意後の円高対応で、日本企業の進出が加速し、輸出が現地生産へ置き換わっていった。

経済産業省の調査では2021年度末の日本企業の海外現地法人は3割がASEANにある。財務省によると22年、エネルギーや食料の輸入価格高騰で日本は貿易赤字が膨らんだが、それを補ったのが海外子会社からの配当などの「第1次所得収支」の大幅黒字だ。ASEANからは14%を占め、28%の米国に次ぐ貢献度だった。

30年ごろには日本は国内総生産GDP)でASEANに追い越されるとの予測もある。ASEANの成長が、投資収益を通じて日本の成長を支える構図は、今後いっそう顕著になる。

心配なのは日本の存在感が薄れ気味なことだ。昨年のASEANの対内直接投資のうち日本は12%と、米国(16%)や中国(13%、香港を含む)に後れをとった。勃興する電気自動車(EV)市場で中国に先行を許し、デジタル経済でも入り込めていない。

とはいえ日本が張り巡らせ、自由貿易協定(FTA)でつながる供給網や、現地に寄り添って育んだ信頼感は、他国にない貴重な財産だ。脱炭素へのエネルギー転換、法体系の整備などなお先導できる分野はある。米中対立下の安保支援でも日本への期待は高い。

肝心なのは時代錯誤な「上から目線」を捨て去ることだ。ASEANからの対日投資の誘致や第三国への協調投資、人材の相互交流など、対等なパートナーとして関係を深めていくべきだ